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【LUNARiA -Virtualized Moonchild-】感想



Keyによって制作されて2021年12月24日に発売された、キネティックノベルです。
公式のキャッチコピーは「月と地球、バーチャルとリアルをつなぐラブストーリー」です。

追記よりネタバレを踏まえた感想になります。





































AIとの恋愛……と見せかけて<人間>との恋愛



これは人間とAIの種族を越えた悲恋を描いた物語――ではありませんでした。
別作品との共通項が垣間見えたこともあり、てっきりこの路線で最後までやり通すのかと思っていましたが。まさかのどんでん返しが待っていましたね。

公式の説明文には『月と地球、バーチャルとリアルをつなぐラブストーリー』と書かれていたこともあり、すっかり騙されていました。
バーチャルとリアルってヒロインと主人公のことを指しているわけではなかったのですね。確かに最終局面でバーチャライズによってバーチャルとリアルを繋ぐことが鍵となっていたから、そういう意味だったのか……?

希優が本当に地球のことを何も知らない少女であり、自分でAIのフリをしていたということが拍車を掛けており、大きなミスリードとなっていたと思います。
最初のやり取りをよくよく見れば自分の素性を明かす際にどもることが多く、質疑応答が本分のAIにしてはありえないとは思います。
その他も人間らしい感情の変化が多く感じましたが、AI-DOLLにお熱なガヤが彼女の正体を見抜けなかった時点で、この時代のAIとしては一般的だったのかもしれません。

それにしても、夕日を見上げながら「当たり前のことは当たり前じゃないんですよ」と言っていたQの台詞が、途端に重みが増しました。
決してAIの観点から生まれた発言ではありませんでした。彼女はただ当たり前のことを当たり前に経験できていなかったんだからそれはそう;;

lunaria1.png


真相が明かされる場面はやはり本作におけるターニングポイントであり、膨大なテキスト量の下に語られました。
残り少ない命の中で娘の為にも前も向いて生きようとする天宮美優の日記には涙を誘われること間違いなしです。日記はやはりずるい。

ビット君も雨宮希優の正体を、最初は事実として受け入れることができていませんでした。
「あるがままの彼女を好きになればいいだけだった」と考え、Qと地球で24時間を過ごしたビット。彼女が好きになったのはAIとしてのQだったはずであり、何よりも彼女のことを全く理解できていなかったという恐怖がそこにはありました。

この辺りのビットの一連の葛藤と独白、Qを救うという決意も見所ですね。
LUNARiAはラブストーリーです。ですから重要なのはどんな真実があったのかではなく、真実を前にした時のビットの心情だと思います。
ここを大切にしてくださっているのが本作で好きな点でした。



ゲームオーバー……と見せかけてハッピーエンド



完遂寸前で太陽フレアに呑まれてしまう、あまりにも無情で残酷な展開。
key作品がこういうゲームであることを今まで忘れていました。

決して彼女が幸せを得ることは都合が良すぎたとは思えません。そもそもここまでやってきたことが針に糸を通すようなチャレンジだったので。
ここで自動操縦にエラーが起きる方がむしろアンラッキーすぎました。


本当に救いのない物語だと思いましたが、ガヤが「何事にも終わりがあるからこそ美しい」と言っていたように、受け入れるしかないのかもしれません。
大切な人と生き別れても前も向いて生きていく〝〝強さ〟〟。それこそが本作で謳われていた〝〝テーマ〟〟であり〝〝メッセージ性〟〟だったと思います。


……なんてことはなく、迎えたのは超ハッピーエンドでした。やったぜ。
38万km離れた二人の距離が、今初めてゼロになった。←好き

最後のポッドでの会話の場面ではまるで最大の山場かのようにCG変化やテキスト演出に力が入っており、このまま終わってしまうかのような雰囲気を醸し出していたので、完全に勘違いしてしまいました。
key作品がこういうゲームであることを今まで忘れていました。

key作品は例外こそあれど、やはり「さよなら」を念入りに描写してこちらをオンオン泣かせてからの逆転勝利大団円というのが特色の一つとしてあると思います。
そのお別れの演出に何よりも力を入れてるからこそ最終的に報われるハッピーエンドも際立ち、没入感が引き立てられます。これが「泣きゲー」と大衆から評されている所以だと思います。


自分としては上記のように死に別れで締めくくると思っていたので、とても意外な結末でした。
というのも、ビットがQを救出する過程でも自身を呼びかけるQの声が鼓舞として何度も脳内再生されており、完全にQを自分の心に住まわせる準備をしているようにも見えてしまいました。
最終章におけるQのボイスデータと共に走ったワールドツアーも、「ビットが今後AIのQと共に『Q-BIT』として在り続ける未来」へ繋げる為のエピソードだと思っていました。

しかし、沈む船の中で笑顔を作り続けていた希優が一瞬だけ見せた顔。「本当は地球に行きたいに決まってる」という慟哭こそが彼女の紛れもない本心です。
そして、ミャウがビットを諭す際の発言。彼女の六年間の人生の行動原理であり根幹であったもの。これこそが本作の美徳としていたものだったと思います。





ミャ



登場人物が実質四人であり、ビットとQのラブストーリーが主題である本作においては、たった二人のサブキャラクター。
主人公の相棒であったガヤと、好敵手であったミャウちゃん。中でもミャウちゃんは「オタクってこういうのが好きなんでしょ?」を全部やってくれたようなキャラでしたね。

イリヤは一般人のビット達と違って権力に近しい場所に立っている分物語においては取扱注意なところもあったと思いますが、活躍の塩梅としては丁度良かったです。
ルナーライズでも極論この子がお父様のデータを盗んだり説得したりして全て解決してしまうなんて展開も考えられたわけですからね。あくまでビットを立てており、彼女が与えたのはコンティニューコインのみでした。
上記のビット君を諭す場面と言い、役回りがとても光っていました。

好きなシーンはLAST RUNにおいてQのボイスデータに対して返答してる場面です。イリヤの口調になってる辺り多少なりとも面食らってたのかな……?




まさしく名脇役……のような存在ではありましたが、本作の物語の結末としてはイリヤは散々だったと思います。
ウサギとオオカミのラブストーリーにネコの入る隙間はなく。彼女の人生を変えた恋が実を結ぶことはありませんでした。

最後の告発によってセレーネ最高経営責任者の娘である彼女が失うものは言うまでもなく大きすぎます。
事実を隠蔽するよりは二度と天宮親子のような被害者を生まないことこそが彼女の信念だったのでしょうか。
しかし、危ういのはリアルの立場だけではありません。スポンサーの動向次第では、SOFにおける金に物を言わせた彼女のプレイスタイルや、参加そのものにも支障が出そうな告発です。ビットの好敵手としての関係まで失ってしまっては彼女に残るものは一体……? 

イリヤがルナーライズ直前にアノニマスとしてビットと行った対話こそが、ビットを恋愛対象として吹っ切る為の最後のプロセスだったと思います。
最終的にはイリヤはQ-BITとしてのビットを好きになってくれてはいました。しかし、彼女が元々好いていたのはT-BITとしてのビットです。
LUNARiAは他の美少女ゲームのようにルートが用意されておらず、一本道の物語です。彼女の胸中は如何ほどだったのでしょうか。








key作品オリジナルのジャンルであるキネティックノベル。
自分はkey系列のゲームをプレイしたのはおそらく三年振りだったのですが、お別れの演出やBGMへの注力具合は凄まじく、涙腺への攻撃力の高さは流石はkeyブランドの作品だと感じました。
泣けるゲームの方がスゴいというわけではもちろんないのですが、泣けるゲームからしか得られない成分もあるということを感じさせてくれました。

LUNARiAという作品単体に目を向けても、二度に渡るどんでん返しによって読み手を引き付けてくることや、その中でビットの心理描写を丁寧に描くことで「ラブストーリー」という部分を徹底するなど、ゲームとしての完成度の高さを感じました。
自分がクリアにかかった時間は7時間ほどでしたが、それでもここまで感情移入をさせられるゲームがあるということに感銘を受けました。



好きなCGはファイナルミッションにおけるゴール。二人のシリアスな表情がいいね。


BGMは『LUNAR WORLD』をはじめとしてピアノソロの曲が多くの割合を占めており、作品全体のイメージとも繋がっています。
もちろんそれ以外の曲も多く、中でも『MOONCHILD』『COZMO』は何気ない日常のシーンを盛り上げてくれました。
ビットのイメージとそぐう熱い曲もあり、『SKYOUT FOREVER』は彼のテーマソングでした。

というわけで上記の四(五)曲が自分のお気に入りです。そういうことになりますね。

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