
その目だれの目?【CHAOS;HEAD】感想
ちょうどカオスチャイルドのアニメが放送中ということで、前作のカオスヘッドの二周目のプレイが終わったので、ネタバレありのプレイ感想を書いていきたいと思います。
カオスヘッドを含む5pbの作品は2月28日までセールが実施されているので、興味のある方は是非ご購入ください! ……というダイマをこの記事と一緒にしようと思っていたのですが、もうセール終わりましたね。さっき。一歩遅かった……。
本当はもっと早く投稿したかったのですが、諸事情により忙しくてできなかったです。
他の科学ADVシリーズと比較した場合のカオヘの魅力を説明させていただくと、とにかく「得体の知れない恐怖」に引き込まれていくADVです。
カオチャも十分怖いシーンはありましたが、カオヘはそれ以上です。主人公が事件に巻き込まれていく恐怖感。正にサイコホラーサスペンス。終始ドキドキハラハラしながら楽しむことができます。
他にも、ヒロインの個性はシリーズの中では最も強い作品でしょうか。可愛くて変な女の子ばっかりです。最も美少女ゲーっぽいと感じます。
主人公の拓巳自身も十分変な奴なのにも関わらず、ファンディスクでは拓巳がヒロイン達に振り回されまくってます。
OPは四曲あってどれも捨て難いですが、PS3版の「カオスロジック」が一番好きです。
本編のCGがほぼ使われていない完全オリジナルアニメーションという異色のOPで、映像が死ぬほどカッコイイです。「どこまでが現実でどこまでが妄想なのか」という作品の持ち味であるサイコな恐怖感が表現されています。
科学ADVシリーズ全体で見ても最もクオリティの高いOPと言っても過言ではない。と思ってます。
本文はネタバレ全開なので畳んでおきます。PCから閲覧されている場合は「続きを読む」からご覧ください。
その目だれの目?
プレイ当時の感想を中心に、プレイを終えた後に振り返ってみて思ったことも交えて、簡潔に書いていきたいと思います。
1章「Eyes in eyes」
ADV特有のポエム。いきなり主人公がヒロインに殺されるというただならぬ場面からスタート。
キスされながら殺されるってどういうことだ……。インパクトの強い導入でした。
「主人公が絵に描いたようなキモオタ」という情報は前から知っていたのですが、予想以上にキモオタでした。ふひひって笑い方がすごいです。吉野裕行迫真の演技。
キモオタの癖にめちゃめちゃイケメンというギャップが面白かったです。
「張り付け」の現場で、ビシィさんこと梨深と初対面。
この女の子、初対面の癖に拓巳をニックネームで呼んだり「あなたに会いたかった」とか言ったりするので、初見はマジで「こいつタイムリープでもしてきたんか?」と思いました。シュタゲのせい。
将軍がチャットで貼ってきた画像もそうでしたが、やはりグロいです。カオヘ。血の量が多すぎます。序盤からカオヘのグロさをわからされました。
一章は優愛との交流がメインでしたね。
拓巳は優愛に対して強い警戒心を抱いたものの、次第に解されていき、信じてもいいと思ったところで裏切られる……ということで、一章から絶望感たっぷりでした。
こんなことをされたらもう誰も信じられなくなりますよね。普通キャラクターの豹変って終盤でやるのが王道じゃないんですか……。これは流石に読めませんでした。
プレイヤー視点でもどのヒロインにいつ裏切られるかわからなくされるので、二章以降は色んなキャラが怪しく見えて仕方ありませんでした。
早く続きを読みたいと強く思わされる一章でした。
2章「Click me」
病院に行ったり、FESのライブに行ったり、七海とケータイショップに行ったり。
引きこもりの拓巳にしては行動力が高い章でした。というかいちいち拓巳の妄想が暴走しまくりでした。三次元に興味ないとか言いつつエロいこと考え過ぎでは?
なお、妄想トリガーは初回プレイ時は全てポジティブを選択して進めていました。どちらかに絞った方がCGの回収がしやすいと攻略サイトに書いてあったからです。
実際好き勝手に進めてしまうと、二週目三週目でどの場面でどれを選択したかを忘れてしまいそうですよね。それにカオヘはとにかく怖い演出が多すぎるので、鬱にならない為にも一週目は全てポジティブにしておいて正解だったかもしれません。あえて全部ネガティブを選ぶマゾプレイも面白そうですが。
3章「将軍」
ついに拓巳の家に来てしまう悪魔女。勝手に部屋に入ってくるとか怖すぎます。
初対面の時から血まみれだったしいつの間にか友達だったことにされてるし、とにかく不思議なキャラだと思いながらプレイしていました。得体の知れない怖さがあるというか。そもそも冒頭で普通に殺してきましたしね。
まあ、メインヒロインが悪い人っていうのも普通考えられませんし、謎に包まれているだけであって実際はいい子なんだろうなと考えていました。
雑貨屋へディソードを買いに行く拓巳。
誰が見てもただのおもちゃだとわかるような剣でした。これから覚醒した後でセナのディソードみたいに豪華な装飾がつくのかな、とも思いましたが……。なんて安っぽさ。
チャット越しでしか話していなかった将軍と、ついに対面。
将軍の姿は一章終了後に流れたOP(カオスロジック)から既に明らかになっていました。OPでの扱いを見る限りやっぱりキーパーソンっぽいと感じていました。一体何者なのか……名前も明らかになっていませんし、驚きの正体が用意されているのかなと期待していました。
ちなみに将軍はカオヘファンからは「真おにぃ」というあだ名で呼ばれているらしいです。面白すぎる。
4章「Di-Sword」
セナの厨二トークとあやせの厨二トークを聞き、いよいよディソードの正体が見えてきます。ディソードを持ってるあやせの立ち絵はかっこいい。
ディソードの説明は公式サイトに書いてあったので、カオヘ購入前から知っていました。典型的な異能バトル要素かと思いきや、しっかり理屈があるのですね。
プレイ前はカオヘのことをディソードを使ってチャンバラし合っていく話なのかと思ってましたが、そんなことはなかったです。
七海との絡みはどの章でも癒しイベントですね。拓巳とは対極的な明るさを持っているキャラなので、随分ウザがられていますが。
本編は全体的に重苦しい雰囲気に包まれているので、度々こういう兄妹のアホなやり取りが見れるのは面白かったです。プレイ中は七海は本編にはあまり関わらないサブヒロインで、こういう役割を担っているのかなと思ってました。まあ、実際はどうなのかと言うと……。
七海は公式の人気投票では一位を獲得したキャラらしいです。納得の人気でした。
5章「妄想」
ようやくメインヒロインとの会話も増えてきて、いよいよシナリオも本題に差し掛かってきたと感じました。とか思ってたらこの章で消えました
とにかく梨深とのやり取りがメインの章でしたね。デートしたり妄想したり、あたかもギャルゲーの個別ルートのような。
話的にはあんまり進展がなかったので書くことがないです。
6章「Noah」
七海の携帯の着信音が部屋で鳴り響くシーンは、本編最恐の場面ですよね。
僕も間違いなくこの時が一番ビビりながらプレイしていました。あの軽快な着信音からの手首CGはトラウマすぎる。
6章は「七海クエスト」と呼ばれる重要なイベントがあり、カオヘのターニングポイントとも言えるシナリオでした。
この時の将軍は今思えば偽者だったわけですが、プレイ当時はてっきり本物だと信じていました。「声なんて音の振動でしかないよ」という台詞がなんだかそれっぽくて、思いっ切り騙されてました。
将軍は10章まで一貫して拓巳の恐怖の対象だったわけで、ネガティブ妄想でも何かと登場回数の多いキャラでしたが、なんだかんだで実はイイ奴なのかなぁということは察していました。
ですからこの七海クエストにしても、主人公をギガロマニアックスとして覚醒させる為にわざと追い詰めているのかな? と深読みしていました。実際は全然違う奴の仕業でしたが。
ここではYes/Noの択をミスるとゲームオーバーになります。主人公が死に直面しているということを実感させられますね。
僕は一度ゲームオーバーになってしまいました。「ここ以外の場所でもその剣は見える」とかYesなのかNoなのかわからん……。
7章「psychopath」
梢が初めて喋ります。この章でようやくヒロイン全員との会話が終わったことになるでしょうか。
梢のこの性格は普段の大人しい姿とのギャップが凄まじいですが、こういうアホの子キャラだというのはLCCの公式サイトで予習していたのでそこまで衝撃はなかったです。
それにしてもここまでバカっぽい喋り方なキャラも中々いませんよね。プレイ当時はイライラ……というよりは聞いていて恥ずかしくなるような喋り方でした。
8章もそうだったのですが、とにかく話のテンポが悪く感じてしまいました。
というのも話の視点が主人公に留まらず、コロコロと切り替わるからです。番視点や野呂瀬視点のエピソードが多く挟まれるせいで、話はいつ進展するんだとやきもきしてしまいました。
実際は彼らの話が描かれたのは伏線でしたし、サスペンスを盛り上げる為にも欠かせない内容だったのですが、自分の根気がなさすぎてどうしても中だるみしているように感じてしまいました。
8章「Ir2」
あやせのお見舞いに行ったり、セナvs梨深が勃発したり。
三住がナイフを持ち、自身が邪心王の使いであることを明かすネガティブ妄想。
ネガティブ妄想の中ではこれが一番好きかもしれません。こういうふざけすぎてて笑えるような妄想が読んでて楽しいです。

このポジティブ妄想も面白かったです。所謂「ドッキリ大成功!」というオチ。
ベタベタだし絶対ありえないような展開ですが、もしこうだったらどんなに良かったことか!と、主人公に激しく共感してしまいました。
集団ストーカーをされているという妄想攻撃を受ける判刑事。
今思えば判刑事は梢ルートの拓巳と梢と同様の妄想攻撃を受けていたわけですが、全く動揺を見せていませんでした。梢と拓巳は心が壊されたというのに。判刑事、流石のハードボイルド。
9章「giga-lo-maniac」
妄想科学ADVっていうから主人公がスゴい妄想をしていく話なのかと思いきや、まさか主人公自身が妄想の存在だったなんて……。このどんでん返しには完全に度肝を抜かれました。
本性を現した諏訪に撃たれてしまう判刑事。
諏訪から電話がかかってきた時は、「ついに諏訪まで被害者に……;;」と思ってしまいましたが、こういうことでしたか。カオヘは野呂瀬というわかりやすい黒幕の存在が中盤からずっと仄めかされていたので、近くに犯人がいるってことを全く想定してなかったです。流石にサスペンスを読む上で人を疑わなすぎでした。頭からっぽで読んだ方が驚きがあるので、面白いことはあるんですけども。
裏の主人公とも言えるぐらい独自で事件を追っていた判刑事の出番がここで終わってしまうのはあんまりなので、生還オチを期待したのですが……残念;;
そして明らかになるニュージェネの犯人。グリム。
グリムが初登場した時はてっきり「グリムの正体は実はヒロインの一人で、拓巳と出会う前からチャットのやり取りをしていたのだ!」みたいな話が、誰かの個別ルートにてどっかの栗御飯みたいなノリで語られるかと思いきや、まさかの真犯人でした。
意外な人物ではありましたが、意外というかノーマークだったので、「あっそうだったんだ」という程度の驚き。そこまで関わったキャラでもないですしね。葉月さん。

なお、テレビアニメ版CHAOS;HEADのOPのこのカットはあまりにも有名です。初っ端から平気でネタバレしてくるの何?
10章「silent sky」
「梨深を助けたい」という一心で殻を破る拓巳。ついに主人公覚醒です。長い長いタメでした。
そのタメが長いだけあってヒキニートだった今までとのギャップが凄まじく、非常にかっこよく映りました。「妄想をハックして道を開ける」とかさらりとやってのける拓巳しゃんはすごい。
笑えるぐらいの圧倒的な強さで葉月と諏訪を下し、ついに野呂瀬との決戦。
しかしのろしぃは強かった。拓巳は何回も何回も妄想攻撃を受けてしまいます。
ずっと妄想攻撃ハメを喰らっていて自分のターンが永遠に来ないというか。痛そうだし可哀想だしグロいし、もうめちゃくちゃでした。
野呂瀬の妄想に完全に呑まれてしまい、反撃をすることもできない拓巳。その時聞こえたのは将軍の声だった!(blue skyに続く)
個人的には共通ルートよりもこっちの方が好きかもしれないです。面白い話が多かったです。
好きなルート順に順位をつけたので、順位の低いルートから順番に感想を書いて行きたいと思います。どれも面白い話だったので順位をつけるのも億劫になりましたが……。
6位 優愛ルート「月と太陽」
生きているのか、死んでいるのか、分からないわたし。
もう、優愛ちゃんもいないから。
死んだ方がマシ。

え!?ここで終わり!?
監禁される、ストックホルム症候群の疑惑が出る、最終的には心中を持ちかけられる、などなど。ヤンデレルートでした。
共通ルートを既にクリアしたプレイヤーからしてみれば、優愛の言い分が間違っているというのは既にわかっていることです。ですから拓巳がここまで責められている姿を見なければならないのは、なんというか歯がゆかったです。
拓巳が最も主人公してるルートだと思いました。
妄想を見せることで美愛を一度死んだことにした拓巳。自分にしかできない方法で美愛を救った姿にはシビれました。
救った動機も「自分が殺人犯になるのが嫌だから」というなんとも彼らしい理由。拓巳のかっこよさが全面的に出ていたと思います。
拓巳が差し伸べてくれた手を握る美愛。流れる優愛のキャラクターソング、「WHITE LILY」。すごいところで終わりましたね。
美愛の優愛に対する罪悪感は確かに解消されたものの、拓巳の将軍疑惑は晴れないまま。二人はこれからどうするんですかね。
美愛はニュージェネの被害者の家族であり、ヒロインの中では誰よりも犯人を憎む理由のある人物なので、拓巳と共闘するような展開になってくれたら嬉しかったですね。
美愛視点のまま物語が終わってしまったのも置いてけぼりを喰らってしまった理由でした。
美愛を救った拓巳。拓巳に救われた美愛。最後までお互いに「なんなんだコイツ」と思いながらも命の救出が生まれたという、いびつな関係でした。
タイトルの月と太陽とはそれぞれ美愛と優愛のことを表しているのだと考えられますが、美愛を救った拓巳は、彼女にとっての新しい太陽となっていたのかもしれません。
わたしは、伸ばした手で、彼の手を握った。
その手は、とても――
とても、温かくて――
彼の体温が、肌を通して、伝わってきて――
わたしの手は、温もりとともに、震えが収まって――
わたしは、まだ、生きているって、感じた――
5位 セナルート「デウス・エクス・マキナ」
そんなに、ぼろぼろに泣いて。
僕みたいな、キモオタをかばって、血だらけになって。
僕も、セナも、真っ赤に染まって。
でも、セナの熱さを、僕は、確かに感じたから。
セナの声が、確かに届いたから。
一緒に、ディソードを振りかぶる。

本編のクールキャラそっちのけで照れまくり泣きまくりのセナしゃん。可愛いです。
今まで高圧的な態度で拓巳と接してきたセナの、人としての脆い一面。「電気仕掛け」という発言の真意。セナというキャラクターの本質が明かされました。
セナのキャラクターソング、「Calling」と共にスタッフロール。
そして、スタッフロール後に明かされたのは衝撃の真実でした。あんたマジか。
デバッガーの仕事はあくまでエラーを消去することなので、その立ち位置に居ながらも今までは「監視」をするのみで、干渉はして来なかったわけですね。
なんというか、どこに潜んでいるかわかりません。拓巳とセナがこれから死んだ人たちの分まで生きて行くって決意したのにも関わらず、あっさり死んじゃったのもかなり衝撃的でした。
突飛すぎる、納得の出来ないような展開が連続していて、まるでこのルートで起こったこと全てが幻だったように感じました。真の300人委員会は果たして存在するのか、世界は本当に電気仕掛けなのか……。カオヘや他のシリーズ作品の世界観を根元から覆すような真相を孕んでいるのにも関わらず、このような真相を示唆するテキストはセナルート以外には全く登場せず。奇怪な話でした。
それにしても共通ルートに進んでもセナルートに進んでも、波多野さんは結局死んでしまいます。
波多野さんとセナが共に生き残り、家族としてやり直していく未来もあれば良かったかもしれません。本人のやったことがやったことなので、報われる展開を希望するのはおこがましいことかもしれませんが。
やはり波多野さんにとってもセナは、セナにとっても波多野さんは、ただ一人の家族ですから。それが他人の手によって欠けてしまうのでは、誰も幸せになれません;;
チートコードを盲目的に信じる拓巳と、終盤拓巳がピンチに陥るまで泣きっぱなしのセナには、少なからず違和感がありました。お前らしっかりしろや!と。
しかし、これが彼らの本質なのかもしれません。セナにしても拓巳にしても、300人委員会の言葉や策略によって、人としての弱い部分を突かれていたように感じました。
理性的とも合理的とも決して言えない、他でもない「人が持つ感情」に従って行動した、拓巳とセナ。「人を含めたあらゆるものは電気仕掛け」という言葉に対するアンチテーゼのようでした。
「哀しいけど、もう、いいんだ……」
「死んだ人を生き返らせるのなんて、エゴでしかないから……」
僕も、同じ意見だった。
そして、僕たちは、生きているから。
これから、死んだ人たちの分まで、生きて行かなくちゃならない。
4位 あやせルート「罪過に契約の血を」
僕が見てきた青い空を覆い。
あやせの見てきた赤い空を覆い。
世界に闇をもたらそうとする、不浄なる邪心の空。

なんか哲学的な話でしたね(小並感)
共通ルートではセナとあやせは拓巳からしてみれば等しく「難解なことを言ってくる女」なので、一括りにして厨二病というレッテルを貼られていました。
しかし、実際に厨二病だったのはどう考えても邪心邪心連呼しているあやせだけ。これも……運命石の扉の選択か……。
「罪過に契約の血を」が流れ、空へディソードを投擲するあやせ。
今までのクールなあやせからは想像できないような叫び声も相まって、熱いシーンでした。
あやせのキャラクターソング、「心の闇を切り裂いて」が流れて、スタッフロール。親の声より聞いたFESの曲。
このルートは解釈が分かれそうです。
ニュージェネが全てグラジオール黙示録で予言されていたこと。都合良く邪心王グラジオールが現れたこと。野呂瀬が全く出てこないこと。
ギガロマニアックスのヒロイン達は「心を壊されている」という話でしたが、あれではあたかもグラジオール黙示録の筋書きを演じる人形となっているようでした。
以上のように共通ルートと食い違うような描写が散見されました。
個人的な解釈ですが、このルートでの出来事は全てあやせの妄想が及ぼした出来事、だったんですかね。
元々グラジオール黙示録は拓巳の言うようにあやせの妄想の産物でした。それは「ニュージェネ事件を予言している書物」という、あやせの妄想が生み出した本。何故起こってもいない計画のことを予言できたのかというのは、一重にギガロマニアックスの持つ力によるものでしょう。
共通ルートではあやせの妄想の影響は、「グラジオール黙示録がニュージェネを予言していた」だけに留まりました。しかしこのルートでは、あやせの妄想はそれ以上に強く影響を与えるようになりました。
グラジオール黙示録が「単なる不思議な予言の書」ではなく、「あらかじめ日記」になってしまったのです。
7つのディソードが手元に揃うこと。邪心王グラジオールが出現すること。そして「杭を打ち」「聖域へと辿り着く」こと。
書かれたことが全て現実となり、あやせが暗に望んでいた、あやせを歪んだ世界から救う為の筋書き。渋谷中を混沌の渦に陥れていたニュージェネという連続殺人事件は、あやせの妄想の力によって、「あやせの世界のイベント」へと塗り替えられていたのです。
……まあ、無理のある解釈ですかね。ギガロマニアックスの力で時を越えたとか意味分かりませんし。しかしこれぐらい滅茶苦茶な考えじゃないとこのルートは理解できないと思いました。
ノア2は破壊できていませんし、あやせ以外のヒロインは全員壊れてしまいますし、解決してない度で言えば優愛ルートなんて目じゃないぐらい高いルートなのですが、そんなのどうでも良くなるぐらい綺麗な終わり方でした。なんと言っても二人が幸せそうだったので。
歪んだ世界の影響を強く受け、共にその歪んだ世界を壊した、拓巳とあやせ。
……もしやキャッチコピーの「そして、ワタシは、世界を殺す」って、あやせルートのことだったのか?
僕の手を、温かくて柔らかい手が握りしめてくる。
あやせが、僕の隣に立って。
僕と同じように、空を見上げて。
声もなく、涙を流した。
「青は、あんなに美しい色をしていたのね……」
3位 七海ルート「daydream」
僕は、妹とキスをする。
妹の、甘い吐息を感じる。
とても幸せで。
とても満たされた気分になって。
七海への愛おしさで溢れて。
でもなぜか、少しだけ、もの悲しくて――
僕の頬を、熱い雫が伝っていって――

いやいやいや! 七海ルートじゃないじゃん!
ポジティブでありながらネガティブでもある得体の知れない恐ろしさを、大いに抱かされたルートでした。
なんですかこれ。こんなエンドがあってもいいのでしょうか。
七海編について、「これハッピーエンドですか?」と聞かれたらバッドエンドだと答えられますし、「これバッドエンドですか?」と聞かれたらハッピーエンドだと答えられます。
将軍の手によっていなくなってしまったと思われた七海が、突如拓巳の前に現れる。
拓巳に朝食を作ってあげる七海。拓巳の話を信じてあげる七海。拓巳と一緒に寝る七海。
この兄弟幸せすぎます。しかし、幸せすぎていくらなんでもきな臭い……。と思っていたら訪ねてきたのはもう一人の七海。絶望に叩き落されました。
拓巳に飛びついてキスをする七海。ヒロインが主人公とキスするなんて、普通の美少女ゲームだったらニヤニヤしたり感動したりする場面のはずなのですが、ここで感じたのは言葉では言い表せない肌寒さでした。
放心状態の中、流れるスタッフロール。七海のキャラクターソング、「Love Power」。
拓巳の迷いが形となって現れた涙を、払拭してしまうかのようなファンシーな曲。
でもこれ、七海のキャラソンじゃない……"拓巳の妄想の"七海のキャラソンだ。五体満足の七海。自分を好きでいてくれる七海。拓巳の理想の七海が歌っているのであって、「本当の七海」が歌っているのではありません。
「私がいなくちゃダメね そばにいてあげるからね」というフレーズが胸に刺さります。本当に彼女がいなくちゃダメな子になってしまったんです。拓巳は。
始めの歌詞から拓巳の顔色が曇っているということが伺えますが、果たしてこの世界で拓巳は、一切の後ろめたさを抱くことなく過ごすことはできたのでしょうか。
尤も「本当の七海」なんて、このエンドに辿り着いた拓巳にとってはないものなのかもしれません。
妹と幸せに過ごしていた拓巳の前に現れたもう一人の妹。続いて出てきたのはディソードを持った梨深。
梨深が告げたのは紛れもなく真実です。しかし、もはや拓巳は何が真実かなんて考えることはやめてしまいました。
拓巳にとっての真実とは、自分が選択したもの。拓巳は自分にとって都合のいい真実――妄想をリアルブートして、閉じこもることに決めたのです。
自分の望んだ妄想の中で生きていくと決めた拓巳。拓巳の理想に応える妄想の中の七海。
「妄想科学ADV」というカテゴリならではの、ハッピーでバッドな結末でした。
余談ですが、七海のキャラソンのCDのジャケット(上の動画のサムネイルのこと)、右手がちょうど見切れていることに悪意しか感じません。七海といえば右手、右手といえば七海みたいな風潮……。
その涙は、流れるままにして、強く、心に誓った。
七海がいる、この世界は。
誰にも、侵させない。
僕が、しっかりして。
絶対に、守る――
2位 梨深ルート「アニマの像」
それはいつもの現実逃避なんかじゃなくて。
僕の覚悟。
僕が信じるのは、ずっと一緒だと言ってくれた梨深の言葉だけ。
さあ、行こう。
行くんだ、西條拓巳。

ビシィさんマジ主人公だよね。たはは・・・。
ルート突入後いきなり梨深視点で始まったと思ったら、速攻でセナと梢が死んでしまいました。
なんとあっさり。どちらも好きなヒロインだったので悲しかったです。(梢は彼女の個別ルートで仕返しを果たしたようですが。)
明らかになる梨深の過去。「自分を殺す」という言葉の意味。
自分を殺した梨深は見た目こそは変わらないものの、中身が無邪気な子供のようになってしまいました。正に「生まれ変わった」のでしょうかね。
人格そのものが全て書き換えられているわけではなく、部分的には引き継がれている状態だと思われます。蕎麦が好きなのは公式キャラ設定で明らかになっていますし。
拓巳のビシィを見て「びし?なぁに?かっこいいね?」とか言ってたけど、あれをかっこいいと思ってやってたのか……?
カオヘ特有のグロ・拷問描写。相変わらずのえぐさ。野呂瀬さん拷問の引き出し多すぎでは?
拓巳の望みによって梨深が――「拓巳が最も望んだ梨深」が復活し、一人で野呂瀬へ決戦を挑む。
タクミから託された最期の妄想、「その目、だれの目?」。
かっこいい!ここでそのフレーズが出てくるとは。ちなみにこの技はファントムブレイカーという格ゲーだと超必殺技に設定されたらしいです。
致命的なダメージを受ける瞬間までチャンスを伺い、大技による大逆転を狙う梨深の姿は、完全に少年漫画の主人公でした。
梨深ルートというよりは梨深のルートという感じの話ですね。
エンディング曲、「Trust in me」。これも非常に明るい曲ですね。本人は死んでしまったというのに。
しかし死んでしまったとはいえ、梨深は拓巳の未来を確かに明るく照らしてくれたので、明るい曲調なのも納得できます。
引きこもりで他人に依存しっぱなしだった拓巳が、脅迫されるまでもなく初めて自分の意思で、誰かの為に行動をしようと決めたのです。そもそも梨深だって、拓巳の言う通り死んでいないのかもしれません。
拓巳とタクミの為に一人でラスボスと戦う梨深も、本編では見ることのできなかった固い決意をした拓巳も、とてもかっこよかったです。希望に溢れる終わり方でした。
梨深に、もう一度会うために。
僕は、崩壊した渋谷へ足を向けた。
待ってて、梨深。きっと、君を見つけ出すから。
そして、今度は僕が、君と、一緒にいてあげるから――
1位 梢ルート「殺戮に至る病」
「拓巳しゃんも、一緒に来てくれる……?」
――もちろん。
ずっと一緒だ。
こずぴぃだけは、僕を裏切らないでくれたから。
こずぴぃだけは、僕のために最後まで頑張ってくれたから。
だから僕も、こずぴぃを裏切らない。
だから僕も、こずぴぃのために最後まで付き合う。

最も好きなルートで、最も衝撃を受けたルート。
これはあまりにも切なくて、あまりにも儚い、世界に嫌われた二人の物語でした。
梢ルートは流血表現が非常に多いので、PS3版やiOS版などのほとんどのverでは大量に規制が入り、内容が大幅にカットされているらしいです。(という説もあれば、ほぼ支障ないレベルの表現緩和だけという説もあったり?よくわかりません。)
規制なしでこのルートを読むことができるのは、箱○版とVita版のみ。Vita版は処理落ちなどの問題もありますが、買って良かったと思いました。
流血表現が非常に多いとは、つまりそういうことです。タイトル通り、殺戮、殺戮、殺戮の嵐。
妄想攻撃を受けた梢は負の妄想が暴走してしまい、クラスメートの女子集団を殺し、梨深を殺し、三住を殺し。果ては自分の唯一の友達であるセナまでも手にかけてしまいます。
最後は諏訪と刺し違え、拓巳と共に花壇の上に寝そべり、息を引き取りました。
スタッフロール。画面にぽつんと置かれたぶちゅぶちゅさん。バックに流れるのは梢のキャラクターソング、「ちいさな声に気づいて」。
東京へ来る前の梢の心中を綴った歌です。
信じてもいいですかその言葉、あなたは傍にいてくれますか友達ですか。能力のせいで気味悪がられ、「鏡」による妄想攻撃のせいで自己像不安定へと陥ってしまった梢の、幸せな女の子になりたいというポジティブな願いが歌われています。
TRUEエンドではセナや拓巳、その他のギガロマガールズという友達に恵まれ、梢は幸せになれました。
しかし、このルートでは、果たして梢は幸せになれたのでしょうか? 嘘じゃない自分で、笑うことができたのでしょうか?
できたわけがありません。最後の最後まで梢は、自分が世界中から嫌われていると思ったまま、その人生を終えてしまいました。
なのにも関わらず、このルートのスタッフロールで流れるのは、ポジティブな願いに溢れる明るい曲……どういう皮肉だ!?
憤りすら沸いてくるような、言いようのない切なさ。個別ルートで唯一泣かされてしまった話でした。
負の感情の赴くまま殺したいと思った相手をドカバキグシャーし、自分を信じてくれたただ一人の女の子であるセナまで失ってしまうことになる梢。
しかし、そんな梢を唯一必要としてくれた人物。それが主人公、西條拓巳でした。
拓巳もこのルートでは、自分が集団ストーカーをされているかのような妄想攻撃を受けます。
更には、自分が唯一心を許していた梨深に裏切られ。自分の妹が陵辱されている写メを見せ付けられ。
精神的にボロボロにされてしまった彼は、誰を信じることもできなくなってしまいました。
そんな彼の前に現れて、自分を裏切って殺そうとしてきた梨深から救ってくれたのは、梢でした。「力」という有無を言わさない彼女の絶対的な強さに魅せられた拓巳は、心の底から梢に助けを求めました。
梢を信じた。というよりは、信じるしかありませんでした。その時の拓巳にとっては。
自分勝手だと指摘される、拓巳が一方的に築いたような利己的な関係でしたが、共に殺戮の道を歩んだ二人の間には確かに愛が生まれていたのかもしれません。
誰も信用できなかった拓巳。誰からも信用されなかった梢。
一見正反対に見えながらも似通った境遇を抱えた二人が繋いだ手は、死んでも離れることはありませんでした。
「あのね、こずぴぃ……拓巳しゃんのこと、好きになっても……いいかなぁ?」
――いいよ。
LCCの感想も書きたいですが、思ったこと全部をじっくり書いてしまうと長くなってしまいそうなので、簡潔に書きます。
・みんな可愛い
・みんな面白い
・全体的にみんな幸せで微笑ましい
・短い
・どのルートもシナリオが使い回し
・どのルートでも強制的に星来とくっつかされる
とにかく主人公とヒロイン達の幸せな後日談が見れるので、ファンディスクとしては良かったと思います。
本編とは打って変わってデレまくりのセナ、あやせ節全開の天然キャラあやせ、ヤンデレ五段活用を自らネタにする優愛など、本編をクリアしたからこそ楽しめるギガロマガールス達のやり取りでした。
しかし、どのヒロインを攻略しようが最終的にはプラス星来ルートになってしまうのと、それに応じて全ルートが使い回し展開という手抜き仕様になってしまうのは、ギャルゲーとしてはどうなんだと思いました。
確かに本編のことを考えると拓巳は星来を捨ててはいけないのですが、そんなことを言い出したらこのゲームは梨深ルート以外は全て浮気になってしまいますし、せっかくなら別世界線の話と割り切ってルート毎に別の展開を用意して欲しかったです。
全ヒロインと格差なく平等にラブちゅっちゅできるという意味では、使い回し展開にしたというのは正解だったのでしょうかね。ルート毎に展開を大きく分けて作られたシュタゲの「比翼恋理のだーりん」は、大きな賛否両論を呼んでしまいましたから。
まあ……と言ってもだーりんの評価は使い回し展開を避けた結果ではなく、普通にシナリオそのものの整合性の問題だったので、擁護にはなりませんが……。
PS3版のOP「極上HEAVEN」は、本編のOPとは打って変わって可愛らしいOPなので必見です。SDキャラ好き。
カオチャLCCのOPもこんな感じのを期待していたんだけど、まさかあんなリビドー全開な内容になるなんて
どのヒロインも魅力的でした。
一週目をクリアした時点では七海が一番好きでしたが、個別ルートやLCCをやっている内に他のヒロインも魅力的に感じました。

梢は見た目や性格も元々一番好きでしたが、何よりも個別ルートが良すぎました。科学ADVシリーズの中でも最も好きなキャラです。
キャラソンの「ちいさな声に気づいて」、やばいです。何度も聞いているのですが、聞く度に個別ルートのことを思い出してしまいます。
梢の個別ルートは人によっては「ヒドい」と一蹴してしまうような最悪なルートなのですが、そこが良いんですよね。確かにセナの言う通りに「お前達は馬鹿だ」と言いたくなるような話なのですが、結末が美しすぎました。
手を繋いで花壇に寝そべるCGも。拓巳しゃんのことを好きになってもいいかな、という梢の台詞も。梢の指から力が抜けていくのを悟り、空のぶちゅぶちゅさんが消える瞬間をこずぴぃが見なくて良かった、と言う拓巳も。血みどろの結末とは対極的なエンディング曲も。全てが言葉で説明し切れないような美しさでした。
ちなみにこの梢の「ちいさな声に気づいて」以外のキャラソンだと、七海の「Love Power」が好きです。
あちらは完全に個別ルートのことを歌っている曲ですよね。まあ、感想で書いた通り厳密には七海のキャラソンではない説が非常に濃厚なのですが。
ラブソングのように聞こえるけれど、あれらの歌詞全てが拓巳が望んだことを演じているだけだと考えると、なんだか悲しくなります。
共通ルートの感想でも書きましたが、公式で二回実施された人気投票では、一位は両方とも七海だったそうです。
まあ一番可愛いヒロインはわた梨深ちゃんだよね。たはは・・・
話はsilent skyの野呂瀬戦から始まりました。
「あなたは、西條くん」「君は、拓巳」と名前を呼んでくるヒロイン達にYes/Noで答えていくシーンには、思わず涙が。
背景が個別ルートなのがずるいです。これ、拓巳の身にリーディングシュタイナーに似た能力が発動したということでしょうか?
例え拓巳が妄想の存在だったとしても、この数ヶ月で築いた彼女達との関係は、紛れもなく現実だった。拓巳はついに自分自身を受け入れました。
覚醒後の拓巳は間違いなく科学ADVシリーズにおいて最強のキャラクターです。というか全フィクション作品の登場人物の中で見ても最強クラスのキャラではないでしょうか。何しろ考えたことを全て即座に現実にできてしまうのですから。
野呂瀬を倒した拓巳の前に現れる梨深。自分を救ってくれたタクミの為に、目の前にいる拓巳を殺さなければいけない梨深。しかし梨深に拓巳を殺すことはできませんでした。

「僕は、化け物なんだ……」
「あたしだって、同じだよ……」
拓巳も梨深も、無から生まれた存在でした。
しかし、拓巳は梨深を助けたいという一心でここまで行動して。梨深は拓巳と過ごした日常を楽しかったと感じていて。二人は確かに存在していました。
告白し合う拓巳と梨深。彼らは共に同じ時間を過ごし、生きていくことを誓いました。
やっと彼らは共に生きていくことができるのですね。共通ルートでは拓巳が死んでしまいますし、個別ルートはほぼ全てバッドエンドでしたが、blue skyでは全てが丸く収まったような幸せな終わり方をしてくれて、本当に良かったです。
カオスヘッドのプレイ中は通りゃんせや七海の右手など、怖すぎる演出に何度もビビらされた思い出です。サスペンスらしく「これからどうなっちゃうの?」と思わされるような展開が多く、プレイしていて先がどんどん気になっていきました。
また、9章以降の拓巳のかっこよさ、魅力的なヒロイン達との個別ルートなど、「怖い」以外にも様々な感動を抱かせてくれました。
間違いなく名作と言える作品だったと思います。また時間があれば周回プレイをしたいです。
カオスヘッドを含む5pbの作品は2月28日までセールが実施されているので、興味のある方は是非ご購入ください! ……というダイマをこの記事と一緒にしようと思っていたのですが、もうセール終わりましたね。さっき。一歩遅かった……。
本当はもっと早く投稿したかったのですが、諸事情により忙しくてできなかったです。
他の科学ADVシリーズと比較した場合のカオヘの魅力を説明させていただくと、とにかく「得体の知れない恐怖」に引き込まれていくADVです。
カオチャも十分怖いシーンはありましたが、カオヘはそれ以上です。主人公が事件に巻き込まれていく恐怖感。正にサイコホラーサスペンス。終始ドキドキハラハラしながら楽しむことができます。
他にも、ヒロインの個性はシリーズの中では最も強い作品でしょうか。可愛くて変な女の子ばっかりです。最も美少女ゲーっぽいと感じます。
主人公の拓巳自身も十分変な奴なのにも関わらず、ファンディスクでは拓巳がヒロイン達に振り回されまくってます。
OPは四曲あってどれも捨て難いですが、PS3版の「カオスロジック」が一番好きです。
本編のCGがほぼ使われていない完全オリジナルアニメーションという異色のOPで、映像が死ぬほどカッコイイです。「どこまでが現実でどこまでが妄想なのか」という作品の持ち味であるサイコな恐怖感が表現されています。
科学ADVシリーズ全体で見ても最もクオリティの高いOPと言っても過言ではない。と思ってます。
本文はネタバレ全開なので畳んでおきます。PCから閲覧されている場合は「続きを読む」からご覧ください。
その目だれの目?
共通ルートの感想
無印カオスヘッドには個別ルートとblue skyが存在せず、この共通ルートしかなかったらしいです。プレイ当時の感想を中心に、プレイを終えた後に振り返ってみて思ったことも交えて、簡潔に書いていきたいと思います。
1章「Eyes in eyes」
ADV特有のポエム。いきなり主人公がヒロインに殺されるというただならぬ場面からスタート。
キスされながら殺されるってどういうことだ……。インパクトの強い導入でした。
「主人公が絵に描いたようなキモオタ」という情報は前から知っていたのですが、予想以上にキモオタでした。ふひひって笑い方がすごいです。吉野裕行迫真の演技。
キモオタの癖にめちゃめちゃイケメンというギャップが面白かったです。
「張り付け」の現場で、ビシィさんこと梨深と初対面。
この女の子、初対面の癖に拓巳をニックネームで呼んだり「あなたに会いたかった」とか言ったりするので、初見はマジで「こいつタイムリープでもしてきたんか?」と思いました。シュタゲのせい。
将軍がチャットで貼ってきた画像もそうでしたが、やはりグロいです。カオヘ。血の量が多すぎます。序盤からカオヘのグロさをわからされました。
一章は優愛との交流がメインでしたね。
拓巳は優愛に対して強い警戒心を抱いたものの、次第に解されていき、信じてもいいと思ったところで裏切られる……ということで、一章から絶望感たっぷりでした。
こんなことをされたらもう誰も信じられなくなりますよね。普通キャラクターの豹変って終盤でやるのが王道じゃないんですか……。これは流石に読めませんでした。
プレイヤー視点でもどのヒロインにいつ裏切られるかわからなくされるので、二章以降は色んなキャラが怪しく見えて仕方ありませんでした。
早く続きを読みたいと強く思わされる一章でした。
2章「Click me」
病院に行ったり、FESのライブに行ったり、七海とケータイショップに行ったり。
引きこもりの拓巳にしては行動力が高い章でした。というかいちいち拓巳の妄想が暴走しまくりでした。三次元に興味ないとか言いつつエロいこと考え過ぎでは?
なお、妄想トリガーは初回プレイ時は全てポジティブを選択して進めていました。どちらかに絞った方がCGの回収がしやすいと攻略サイトに書いてあったからです。
実際好き勝手に進めてしまうと、二週目三週目でどの場面でどれを選択したかを忘れてしまいそうですよね。それにカオヘはとにかく怖い演出が多すぎるので、鬱にならない為にも一週目は全てポジティブにしておいて正解だったかもしれません。あえて全部ネガティブを選ぶマゾプレイも面白そうですが。
3章「将軍」
ついに拓巳の家に来てしまう悪魔女。勝手に部屋に入ってくるとか怖すぎます。
初対面の時から血まみれだったしいつの間にか友達だったことにされてるし、とにかく不思議なキャラだと思いながらプレイしていました。得体の知れない怖さがあるというか。そもそも冒頭で普通に殺してきましたしね。
まあ、メインヒロインが悪い人っていうのも普通考えられませんし、謎に包まれているだけであって実際はいい子なんだろうなと考えていました。
雑貨屋へディソードを買いに行く拓巳。
誰が見てもただのおもちゃだとわかるような剣でした。これから覚醒した後でセナのディソードみたいに豪華な装飾がつくのかな、とも思いましたが……。なんて安っぽさ。
チャット越しでしか話していなかった将軍と、ついに対面。
将軍の姿は一章終了後に流れたOP(カオスロジック)から既に明らかになっていました。OPでの扱いを見る限りやっぱりキーパーソンっぽいと感じていました。一体何者なのか……名前も明らかになっていませんし、驚きの正体が用意されているのかなと期待していました。
ちなみに将軍はカオヘファンからは「真おにぃ」というあだ名で呼ばれているらしいです。面白すぎる。
4章「Di-Sword」
セナの厨二トークとあやせの厨二トークを聞き、いよいよディソードの正体が見えてきます。ディソードを持ってるあやせの立ち絵はかっこいい。
ディソードの説明は公式サイトに書いてあったので、カオヘ購入前から知っていました。典型的な異能バトル要素かと思いきや、しっかり理屈があるのですね。
プレイ前はカオヘのことをディソードを使ってチャンバラし合っていく話なのかと思ってましたが、そんなことはなかったです。
七海との絡みはどの章でも癒しイベントですね。拓巳とは対極的な明るさを持っているキャラなので、随分ウザがられていますが。
本編は全体的に重苦しい雰囲気に包まれているので、度々こういう兄妹のアホなやり取りが見れるのは面白かったです。プレイ中は七海は本編にはあまり関わらないサブヒロインで、こういう役割を担っているのかなと思ってました。まあ、実際はどうなのかと言うと……。
七海は公式の人気投票では一位を獲得したキャラらしいです。納得の人気でした。
5章「妄想」
ようやくメインヒロインとの会話も増えてきて、いよいよシナリオも本題に差し掛かってきたと感じました。
とにかく梨深とのやり取りがメインの章でしたね。デートしたり妄想したり、あたかもギャルゲーの個別ルートのような。
話的にはあんまり進展がなかったので書くことがないです。
6章「Noah」
七海の携帯の着信音が部屋で鳴り響くシーンは、本編最恐の場面ですよね。
僕も間違いなくこの時が一番ビビりながらプレイしていました。あの軽快な着信音からの手首CGはトラウマすぎる。
6章は「七海クエスト」と呼ばれる重要なイベントがあり、カオヘのターニングポイントとも言えるシナリオでした。
この時の将軍は今思えば偽者だったわけですが、プレイ当時はてっきり本物だと信じていました。「声なんて音の振動でしかないよ」という台詞がなんだかそれっぽくて、思いっ切り騙されてました。
将軍は10章まで一貫して拓巳の恐怖の対象だったわけで、ネガティブ妄想でも何かと登場回数の多いキャラでしたが、なんだかんだで実はイイ奴なのかなぁということは察していました。
ですからこの七海クエストにしても、主人公をギガロマニアックスとして覚醒させる為にわざと追い詰めているのかな? と深読みしていました。実際は全然違う奴の仕業でしたが。
ここではYes/Noの択をミスるとゲームオーバーになります。主人公が死に直面しているということを実感させられますね。
僕は一度ゲームオーバーになってしまいました。「ここ以外の場所でもその剣は見える」とかYesなのかNoなのかわからん……。
7章「psychopath」
梢が初めて喋ります。この章でようやくヒロイン全員との会話が終わったことになるでしょうか。
梢のこの性格は普段の大人しい姿とのギャップが凄まじいですが、こういうアホの子キャラだというのはLCCの公式サイトで予習していたのでそこまで衝撃はなかったです。
それにしてもここまでバカっぽい喋り方なキャラも中々いませんよね。プレイ当時はイライラ……というよりは聞いていて恥ずかしくなるような喋り方でした。
8章もそうだったのですが、とにかく話のテンポが悪く感じてしまいました。
というのも話の視点が主人公に留まらず、コロコロと切り替わるからです。番視点や野呂瀬視点のエピソードが多く挟まれるせいで、話はいつ進展するんだとやきもきしてしまいました。
実際は彼らの話が描かれたのは伏線でしたし、サスペンスを盛り上げる為にも欠かせない内容だったのですが、自分の根気がなさすぎてどうしても中だるみしているように感じてしまいました。
8章「Ir2」
あやせのお見舞いに行ったり、セナvs梨深が勃発したり。
三住がナイフを持ち、自身が邪心王の使いであることを明かすネガティブ妄想。
ネガティブ妄想の中ではこれが一番好きかもしれません。こういうふざけすぎてて笑えるような妄想が読んでて楽しいです。

このポジティブ妄想も面白かったです。所謂「ドッキリ大成功!」というオチ。
ベタベタだし絶対ありえないような展開ですが、もしこうだったらどんなに良かったことか!と、主人公に激しく共感してしまいました。
集団ストーカーをされているという妄想攻撃を受ける判刑事。
今思えば判刑事は梢ルートの拓巳と梢と同様の妄想攻撃を受けていたわけですが、全く動揺を見せていませんでした。梢と拓巳は心が壊されたというのに。判刑事、流石のハードボイルド。
9章「giga-lo-maniac」
妄想科学ADVっていうから主人公がスゴい妄想をしていく話なのかと思いきや、まさか主人公自身が妄想の存在だったなんて……。このどんでん返しには完全に度肝を抜かれました。
本性を現した諏訪に撃たれてしまう判刑事。
諏訪から電話がかかってきた時は、「ついに諏訪まで被害者に……;;」と思ってしまいましたが、こういうことでしたか。カオヘは野呂瀬というわかりやすい黒幕の存在が中盤からずっと仄めかされていたので、近くに犯人がいるってことを全く想定してなかったです。流石にサスペンスを読む上で人を疑わなすぎでした。頭からっぽで読んだ方が驚きがあるので、面白いことはあるんですけども。
裏の主人公とも言えるぐらい独自で事件を追っていた判刑事の出番がここで終わってしまうのはあんまりなので、生還オチを期待したのですが……残念;;
そして明らかになるニュージェネの犯人。グリム。
グリムが初登場した時はてっきり「グリムの正体は実はヒロインの一人で、拓巳と出会う前からチャットのやり取りをしていたのだ!」みたいな話が、誰かの個別ルートにてどっかの栗御飯みたいなノリで語られるかと思いきや、まさかの真犯人でした。
意外な人物ではありましたが、意外というかノーマークだったので、「あっそうだったんだ」という程度の驚き。そこまで関わったキャラでもないですしね。葉月さん。

なお、テレビアニメ版CHAOS;HEADのOPのこのカットはあまりにも有名です。初っ端から平気でネタバレしてくるの何?
10章「silent sky」
「梨深を助けたい」という一心で殻を破る拓巳。ついに主人公覚醒です。長い長いタメでした。
そのタメが長いだけあってヒキニートだった今までとのギャップが凄まじく、非常にかっこよく映りました。「妄想をハックして道を開ける」とかさらりとやってのける拓巳しゃんはすごい。
笑えるぐらいの圧倒的な強さで葉月と諏訪を下し、ついに野呂瀬との決戦。
しかしのろしぃは強かった。拓巳は何回も何回も妄想攻撃を受けてしまいます。
ずっと妄想攻撃ハメを喰らっていて自分のターンが永遠に来ないというか。痛そうだし可哀想だしグロいし、もうめちゃくちゃでした。
野呂瀬の妄想に完全に呑まれてしまい、反撃をすることもできない拓巳。その時聞こえたのは将軍の声だった!(blue skyに続く)
個別ルートの感想
NOAHより追加された六つの個別ルート。個人的には共通ルートよりもこっちの方が好きかもしれないです。面白い話が多かったです。
好きなルート順に順位をつけたので、順位の低いルートから順番に感想を書いて行きたいと思います。どれも面白い話だったので順位をつけるのも億劫になりましたが……。
6位 優愛ルート「月と太陽」
生きているのか、死んでいるのか、分からないわたし。
もう、優愛ちゃんもいないから。
死んだ方がマシ。

え!?ここで終わり!?
監禁される、ストックホルム症候群の疑惑が出る、最終的には心中を持ちかけられる、などなど。ヤンデレルートでした。
共通ルートを既にクリアしたプレイヤーからしてみれば、優愛の言い分が間違っているというのは既にわかっていることです。ですから拓巳がここまで責められている姿を見なければならないのは、なんというか歯がゆかったです。
拓巳が最も主人公してるルートだと思いました。
妄想を見せることで美愛を一度死んだことにした拓巳。自分にしかできない方法で美愛を救った姿にはシビれました。
救った動機も「自分が殺人犯になるのが嫌だから」というなんとも彼らしい理由。拓巳のかっこよさが全面的に出ていたと思います。
拓巳が差し伸べてくれた手を握る美愛。流れる優愛のキャラクターソング、「WHITE LILY」。すごいところで終わりましたね。
美愛の優愛に対する罪悪感は確かに解消されたものの、拓巳の将軍疑惑は晴れないまま。二人はこれからどうするんですかね。
美愛はニュージェネの被害者の家族であり、ヒロインの中では誰よりも犯人を憎む理由のある人物なので、拓巳と共闘するような展開になってくれたら嬉しかったですね。
美愛視点のまま物語が終わってしまったのも置いてけぼりを喰らってしまった理由でした。
美愛を救った拓巳。拓巳に救われた美愛。最後までお互いに「なんなんだコイツ」と思いながらも命の救出が生まれたという、いびつな関係でした。
タイトルの月と太陽とはそれぞれ美愛と優愛のことを表しているのだと考えられますが、美愛を救った拓巳は、彼女にとっての新しい太陽となっていたのかもしれません。
わたしは、伸ばした手で、彼の手を握った。
その手は、とても――
とても、温かくて――
彼の体温が、肌を通して、伝わってきて――
わたしの手は、温もりとともに、震えが収まって――
わたしは、まだ、生きているって、感じた――
5位 セナルート「デウス・エクス・マキナ」
そんなに、ぼろぼろに泣いて。
僕みたいな、キモオタをかばって、血だらけになって。
僕も、セナも、真っ赤に染まって。
でも、セナの熱さを、僕は、確かに感じたから。
セナの声が、確かに届いたから。
一緒に、ディソードを振りかぶる。

本編のクールキャラそっちのけで照れまくり泣きまくりのセナしゃん。可愛いです。
今まで高圧的な態度で拓巳と接してきたセナの、人としての脆い一面。「電気仕掛け」という発言の真意。セナというキャラクターの本質が明かされました。
セナのキャラクターソング、「Calling」と共にスタッフロール。
そして、スタッフロール後に明かされたのは衝撃の真実でした。あんたマジか。
デバッガーの仕事はあくまでエラーを消去することなので、その立ち位置に居ながらも今までは「監視」をするのみで、干渉はして来なかったわけですね。
なんというか、どこに潜んでいるかわかりません。拓巳とセナがこれから死んだ人たちの分まで生きて行くって決意したのにも関わらず、あっさり死んじゃったのもかなり衝撃的でした。
突飛すぎる、納得の出来ないような展開が連続していて、まるでこのルートで起こったこと全てが幻だったように感じました。真の300人委員会は果たして存在するのか、世界は本当に電気仕掛けなのか……。カオヘや他のシリーズ作品の世界観を根元から覆すような真相を孕んでいるのにも関わらず、このような真相を示唆するテキストはセナルート以外には全く登場せず。奇怪な話でした。
それにしても共通ルートに進んでもセナルートに進んでも、波多野さんは結局死んでしまいます。
波多野さんとセナが共に生き残り、家族としてやり直していく未来もあれば良かったかもしれません。本人のやったことがやったことなので、報われる展開を希望するのはおこがましいことかもしれませんが。
やはり波多野さんにとってもセナは、セナにとっても波多野さんは、ただ一人の家族ですから。それが他人の手によって欠けてしまうのでは、誰も幸せになれません;;
チートコードを盲目的に信じる拓巳と、終盤拓巳がピンチに陥るまで泣きっぱなしのセナには、少なからず違和感がありました。お前らしっかりしろや!と。
しかし、これが彼らの本質なのかもしれません。セナにしても拓巳にしても、300人委員会の言葉や策略によって、人としての弱い部分を突かれていたように感じました。
理性的とも合理的とも決して言えない、他でもない「人が持つ感情」に従って行動した、拓巳とセナ。「人を含めたあらゆるものは電気仕掛け」という言葉に対するアンチテーゼのようでした。
「哀しいけど、もう、いいんだ……」
「死んだ人を生き返らせるのなんて、エゴでしかないから……」
僕も、同じ意見だった。
そして、僕たちは、生きているから。
これから、死んだ人たちの分まで、生きて行かなくちゃならない。
4位 あやせルート「罪過に契約の血を」
僕が見てきた青い空を覆い。
あやせの見てきた赤い空を覆い。
世界に闇をもたらそうとする、不浄なる邪心の空。

なんか哲学的な話でしたね(小並感)
共通ルートではセナとあやせは拓巳からしてみれば等しく「難解なことを言ってくる女」なので、一括りにして厨二病というレッテルを貼られていました。
しかし、実際に厨二病だったのはどう考えても邪心邪心連呼しているあやせだけ。これも……運命石の扉の選択か……。
「罪過に契約の血を」が流れ、空へディソードを投擲するあやせ。
今までのクールなあやせからは想像できないような叫び声も相まって、熱いシーンでした。
あやせのキャラクターソング、「心の闇を切り裂いて」が流れて、スタッフロール。親の声より聞いたFESの曲。
このルートは解釈が分かれそうです。
ニュージェネが全てグラジオール黙示録で予言されていたこと。都合良く邪心王グラジオールが現れたこと。野呂瀬が全く出てこないこと。
ギガロマニアックスのヒロイン達は「心を壊されている」という話でしたが、あれではあたかもグラジオール黙示録の筋書きを演じる人形となっているようでした。
以上のように共通ルートと食い違うような描写が散見されました。
個人的な解釈ですが、このルートでの出来事は全てあやせの妄想が及ぼした出来事、だったんですかね。
元々グラジオール黙示録は拓巳の言うようにあやせの妄想の産物でした。それは「ニュージェネ事件を予言している書物」という、あやせの妄想が生み出した本。何故起こってもいない計画のことを予言できたのかというのは、一重にギガロマニアックスの持つ力によるものでしょう。
共通ルートではあやせの妄想の影響は、「グラジオール黙示録がニュージェネを予言していた」だけに留まりました。しかしこのルートでは、あやせの妄想はそれ以上に強く影響を与えるようになりました。
グラジオール黙示録が「単なる不思議な予言の書」ではなく、「あらかじめ日記」になってしまったのです。
7つのディソードが手元に揃うこと。邪心王グラジオールが出現すること。そして「杭を打ち」「聖域へと辿り着く」こと。
書かれたことが全て現実となり、あやせが暗に望んでいた、あやせを歪んだ世界から救う為の筋書き。渋谷中を混沌の渦に陥れていたニュージェネという連続殺人事件は、あやせの妄想の力によって、「あやせの世界のイベント」へと塗り替えられていたのです。
……まあ、無理のある解釈ですかね。ギガロマニアックスの力で時を越えたとか意味分かりませんし。しかしこれぐらい滅茶苦茶な考えじゃないとこのルートは理解できないと思いました。
ノア2は破壊できていませんし、あやせ以外のヒロインは全員壊れてしまいますし、解決してない度で言えば優愛ルートなんて目じゃないぐらい高いルートなのですが、そんなのどうでも良くなるぐらい綺麗な終わり方でした。なんと言っても二人が幸せそうだったので。
歪んだ世界の影響を強く受け、共にその歪んだ世界を壊した、拓巳とあやせ。
……もしやキャッチコピーの「そして、ワタシは、世界を殺す」って、あやせルートのことだったのか?
僕の手を、温かくて柔らかい手が握りしめてくる。
あやせが、僕の隣に立って。
僕と同じように、空を見上げて。
声もなく、涙を流した。
「青は、あんなに美しい色をしていたのね……」
3位 七海ルート「daydream」
僕は、妹とキスをする。
妹の、甘い吐息を感じる。
とても幸せで。
とても満たされた気分になって。
七海への愛おしさで溢れて。
でもなぜか、少しだけ、もの悲しくて――
僕の頬を、熱い雫が伝っていって――

いやいやいや! 七海ルートじゃないじゃん!
ポジティブでありながらネガティブでもある得体の知れない恐ろしさを、大いに抱かされたルートでした。
なんですかこれ。こんなエンドがあってもいいのでしょうか。
七海編について、「これハッピーエンドですか?」と聞かれたらバッドエンドだと答えられますし、「これバッドエンドですか?」と聞かれたらハッピーエンドだと答えられます。
将軍の手によっていなくなってしまったと思われた七海が、突如拓巳の前に現れる。
拓巳に朝食を作ってあげる七海。拓巳の話を信じてあげる七海。拓巳と一緒に寝る七海。
この兄弟幸せすぎます。しかし、幸せすぎていくらなんでもきな臭い……。と思っていたら訪ねてきたのはもう一人の七海。絶望に叩き落されました。
拓巳に飛びついてキスをする七海。ヒロインが主人公とキスするなんて、普通の美少女ゲームだったらニヤニヤしたり感動したりする場面のはずなのですが、ここで感じたのは言葉では言い表せない肌寒さでした。
放心状態の中、流れるスタッフロール。七海のキャラクターソング、「Love Power」。
拓巳の迷いが形となって現れた涙を、払拭してしまうかのようなファンシーな曲。
でもこれ、七海のキャラソンじゃない……"拓巳の妄想の"七海のキャラソンだ。五体満足の七海。自分を好きでいてくれる七海。拓巳の理想の七海が歌っているのであって、「本当の七海」が歌っているのではありません。
「私がいなくちゃダメね そばにいてあげるからね」というフレーズが胸に刺さります。本当に彼女がいなくちゃダメな子になってしまったんです。拓巳は。
始めの歌詞から拓巳の顔色が曇っているということが伺えますが、果たしてこの世界で拓巳は、一切の後ろめたさを抱くことなく過ごすことはできたのでしょうか。
尤も「本当の七海」なんて、このエンドに辿り着いた拓巳にとってはないものなのかもしれません。
妹と幸せに過ごしていた拓巳の前に現れたもう一人の妹。続いて出てきたのはディソードを持った梨深。
梨深が告げたのは紛れもなく真実です。しかし、もはや拓巳は何が真実かなんて考えることはやめてしまいました。
拓巳にとっての真実とは、自分が選択したもの。拓巳は自分にとって都合のいい真実――妄想をリアルブートして、閉じこもることに決めたのです。
自分の望んだ妄想の中で生きていくと決めた拓巳。拓巳の理想に応える妄想の中の七海。
「妄想科学ADV」というカテゴリならではの、ハッピーでバッドな結末でした。
余談ですが、七海のキャラソンのCDのジャケット(上の動画のサムネイルのこと)、右手がちょうど見切れていることに悪意しか感じません。七海といえば右手、右手といえば七海みたいな風潮……。
その涙は、流れるままにして、強く、心に誓った。
七海がいる、この世界は。
誰にも、侵させない。
僕が、しっかりして。
絶対に、守る――
2位 梨深ルート「アニマの像」
それはいつもの現実逃避なんかじゃなくて。
僕の覚悟。
僕が信じるのは、ずっと一緒だと言ってくれた梨深の言葉だけ。
さあ、行こう。
行くんだ、西條拓巳。

ビシィさんマジ主人公だよね。たはは・・・。
ルート突入後いきなり梨深視点で始まったと思ったら、速攻でセナと梢が死んでしまいました。
なんとあっさり。どちらも好きなヒロインだったので悲しかったです。(梢は彼女の個別ルートで仕返しを果たしたようですが。)
明らかになる梨深の過去。「自分を殺す」という言葉の意味。
自分を殺した梨深は見た目こそは変わらないものの、中身が無邪気な子供のようになってしまいました。正に「生まれ変わった」のでしょうかね。
人格そのものが全て書き換えられているわけではなく、部分的には引き継がれている状態だと思われます。蕎麦が好きなのは公式キャラ設定で明らかになっていますし。
拓巳のビシィを見て「びし?なぁに?かっこいいね?」とか言ってたけど、あれをかっこいいと思ってやってたのか……?
カオヘ特有のグロ・拷問描写。相変わらずのえぐさ。野呂瀬さん拷問の引き出し多すぎでは?
拓巳の望みによって梨深が――「拓巳が最も望んだ梨深」が復活し、一人で野呂瀬へ決戦を挑む。
タクミから託された最期の妄想、「その目、だれの目?」。
かっこいい!ここでそのフレーズが出てくるとは。ちなみにこの技はファントムブレイカーという格ゲーだと超必殺技に設定されたらしいです。
致命的なダメージを受ける瞬間までチャンスを伺い、大技による大逆転を狙う梨深の姿は、完全に少年漫画の主人公でした。
梨深ルートというよりは梨深のルートという感じの話ですね。
エンディング曲、「Trust in me」。これも非常に明るい曲ですね。本人は死んでしまったというのに。
しかし死んでしまったとはいえ、梨深は拓巳の未来を確かに明るく照らしてくれたので、明るい曲調なのも納得できます。
引きこもりで他人に依存しっぱなしだった拓巳が、脅迫されるまでもなく初めて自分の意思で、誰かの為に行動をしようと決めたのです。そもそも梨深だって、拓巳の言う通り死んでいないのかもしれません。
拓巳とタクミの為に一人でラスボスと戦う梨深も、本編では見ることのできなかった固い決意をした拓巳も、とてもかっこよかったです。希望に溢れる終わり方でした。
梨深に、もう一度会うために。
僕は、崩壊した渋谷へ足を向けた。
待ってて、梨深。きっと、君を見つけ出すから。
そして、今度は僕が、君と、一緒にいてあげるから――
1位 梢ルート「殺戮に至る病」
「拓巳しゃんも、一緒に来てくれる……?」
――もちろん。
ずっと一緒だ。
こずぴぃだけは、僕を裏切らないでくれたから。
こずぴぃだけは、僕のために最後まで頑張ってくれたから。
だから僕も、こずぴぃを裏切らない。
だから僕も、こずぴぃのために最後まで付き合う。

最も好きなルートで、最も衝撃を受けたルート。
これはあまりにも切なくて、あまりにも儚い、世界に嫌われた二人の物語でした。
梢ルートは流血表現が非常に多いので、PS3版やiOS版などのほとんどのverでは大量に規制が入り、内容が大幅にカットされているらしいです。(という説もあれば、ほぼ支障ないレベルの表現緩和だけという説もあったり?よくわかりません。)
規制なしでこのルートを読むことができるのは、箱○版とVita版のみ。Vita版は処理落ちなどの問題もありますが、買って良かったと思いました。
流血表現が非常に多いとは、つまりそういうことです。タイトル通り、殺戮、殺戮、殺戮の嵐。
妄想攻撃を受けた梢は負の妄想が暴走してしまい、クラスメートの女子集団を殺し、梨深を殺し、三住を殺し。果ては自分の唯一の友達であるセナまでも手にかけてしまいます。
最後は諏訪と刺し違え、拓巳と共に花壇の上に寝そべり、息を引き取りました。
スタッフロール。画面にぽつんと置かれたぶちゅぶちゅさん。バックに流れるのは梢のキャラクターソング、「ちいさな声に気づいて」。
東京へ来る前の梢の心中を綴った歌です。
信じてもいいですかその言葉、あなたは傍にいてくれますか友達ですか。能力のせいで気味悪がられ、「鏡」による妄想攻撃のせいで自己像不安定へと陥ってしまった梢の、幸せな女の子になりたいというポジティブな願いが歌われています。
TRUEエンドではセナや拓巳、その他のギガロマガールズという友達に恵まれ、梢は幸せになれました。
しかし、このルートでは、果たして梢は幸せになれたのでしょうか? 嘘じゃない自分で、笑うことができたのでしょうか?
できたわけがありません。最後の最後まで梢は、自分が世界中から嫌われていると思ったまま、その人生を終えてしまいました。
なのにも関わらず、このルートのスタッフロールで流れるのは、ポジティブな願いに溢れる明るい曲……どういう皮肉だ!?
憤りすら沸いてくるような、言いようのない切なさ。個別ルートで唯一泣かされてしまった話でした。
負の感情の赴くまま殺したいと思った相手をドカバキグシャーし、自分を信じてくれたただ一人の女の子であるセナまで失ってしまうことになる梢。
しかし、そんな梢を唯一必要としてくれた人物。それが主人公、西條拓巳でした。
拓巳もこのルートでは、自分が集団ストーカーをされているかのような妄想攻撃を受けます。
更には、自分が唯一心を許していた梨深に裏切られ。自分の妹が陵辱されている写メを見せ付けられ。
精神的にボロボロにされてしまった彼は、誰を信じることもできなくなってしまいました。
そんな彼の前に現れて、自分を裏切って殺そうとしてきた梨深から救ってくれたのは、梢でした。「力」という有無を言わさない彼女の絶対的な強さに魅せられた拓巳は、心の底から梢に助けを求めました。
梢を信じた。というよりは、信じるしかありませんでした。その時の拓巳にとっては。
自分勝手だと指摘される、拓巳が一方的に築いたような利己的な関係でしたが、共に殺戮の道を歩んだ二人の間には確かに愛が生まれていたのかもしれません。
誰も信用できなかった拓巳。誰からも信用されなかった梢。
一見正反対に見えながらも似通った境遇を抱えた二人が繋いだ手は、死んでも離れることはありませんでした。
「あのね、こずぴぃ……拓巳しゃんのこと、好きになっても……いいかなぁ?」
――いいよ。
LCCの感想
僕が購入した「CHAOS;HEAD DUAL」は、NOAHとLCCが一緒になっているというお得なパックでした。LCCの感想も書きたいですが、思ったこと全部をじっくり書いてしまうと長くなってしまいそうなので、簡潔に書きます。
・みんな可愛い
・みんな面白い
・全体的にみんな幸せで微笑ましい
・短い
・どのルートもシナリオが使い回し
・どのルートでも強制的に星来とくっつかされる
とにかく主人公とヒロイン達の幸せな後日談が見れるので、ファンディスクとしては良かったと思います。
本編とは打って変わってデレまくりのセナ、あやせ節全開の天然キャラあやせ、ヤンデレ五段活用を自らネタにする優愛など、本編をクリアしたからこそ楽しめるギガロマガールス達のやり取りでした。
しかし、どのヒロインを攻略しようが最終的にはプラス星来ルートになってしまうのと、それに応じて全ルートが使い回し展開という手抜き仕様になってしまうのは、ギャルゲーとしてはどうなんだと思いました。
確かに本編のことを考えると拓巳は星来を捨ててはいけないのですが、そんなことを言い出したらこのゲームは梨深ルート以外は全て浮気になってしまいますし、せっかくなら別世界線の話と割り切ってルート毎に別の展開を用意して欲しかったです。
全ヒロインと格差なく平等にラブちゅっちゅできるという意味では、使い回し展開にしたというのは正解だったのでしょうかね。ルート毎に展開を大きく分けて作られたシュタゲの「比翼恋理のだーりん」は、大きな賛否両論を呼んでしまいましたから。
まあ……と言ってもだーりんの評価は使い回し展開を避けた結果ではなく、普通にシナリオそのものの整合性の問題だったので、擁護にはなりませんが……。
PS3版のOP「極上HEAVEN」は、本編のOPとは打って変わって可愛らしいOPなので必見です。SDキャラ好き。
好きなキャラ
梢>セナ=七海>あやせ>梨深>優愛どのヒロインも魅力的でした。
一週目をクリアした時点では七海が一番好きでしたが、個別ルートやLCCをやっている内に他のヒロインも魅力的に感じました。

梢は見た目や性格も元々一番好きでしたが、何よりも個別ルートが良すぎました。科学ADVシリーズの中でも最も好きなキャラです。
キャラソンの「ちいさな声に気づいて」、やばいです。何度も聞いているのですが、聞く度に個別ルートのことを思い出してしまいます。
梢の個別ルートは人によっては「ヒドい」と一蹴してしまうような最悪なルートなのですが、そこが良いんですよね。確かにセナの言う通りに「お前達は馬鹿だ」と言いたくなるような話なのですが、結末が美しすぎました。
手を繋いで花壇に寝そべるCGも。拓巳しゃんのことを好きになってもいいかな、という梢の台詞も。梢の指から力が抜けていくのを悟り、空のぶちゅぶちゅさんが消える瞬間をこずぴぃが見なくて良かった、と言う拓巳も。血みどろの結末とは対極的なエンディング曲も。全てが言葉で説明し切れないような美しさでした。
ちなみにこの梢の「ちいさな声に気づいて」以外のキャラソンだと、七海の「Love Power」が好きです。
あちらは完全に個別ルートのことを歌っている曲ですよね。まあ、感想で書いた通り厳密には七海のキャラソンではない説が非常に濃厚なのですが。
ラブソングのように聞こえるけれど、あれらの歌詞全てが拓巳が望んだことを演じているだけだと考えると、なんだか悲しくなります。
共通ルートの感想でも書きましたが、公式で二回実施された人気投票では、一位は両方とも七海だったそうです。
blue sky
共通ルートと全ての個別ルートを見終えたプレイヤーの前に現れる、「CHAOS;HEAD」の真の結末。話はsilent skyの野呂瀬戦から始まりました。
「あなたは、西條くん」「君は、拓巳」と名前を呼んでくるヒロイン達にYes/Noで答えていくシーンには、思わず涙が。
背景が個別ルートなのがずるいです。これ、拓巳の身にリーディングシュタイナーに似た能力が発動したということでしょうか?
例え拓巳が妄想の存在だったとしても、この数ヶ月で築いた彼女達との関係は、紛れもなく現実だった。拓巳はついに自分自身を受け入れました。
覚醒後の拓巳は間違いなく科学ADVシリーズにおいて最強のキャラクターです。というか全フィクション作品の登場人物の中で見ても最強クラスのキャラではないでしょうか。何しろ考えたことを全て即座に現実にできてしまうのですから。
野呂瀬を倒した拓巳の前に現れる梨深。自分を救ってくれたタクミの為に、目の前にいる拓巳を殺さなければいけない梨深。しかし梨深に拓巳を殺すことはできませんでした。

「僕は、化け物なんだ……」
「あたしだって、同じだよ……」
拓巳も梨深も、無から生まれた存在でした。
しかし、拓巳は梨深を助けたいという一心でここまで行動して。梨深は拓巳と過ごした日常を楽しかったと感じていて。二人は確かに存在していました。
告白し合う拓巳と梨深。彼らは共に同じ時間を過ごし、生きていくことを誓いました。
やっと彼らは共に生きていくことができるのですね。共通ルートでは拓巳が死んでしまいますし、個別ルートはほぼ全てバッドエンドでしたが、blue skyでは全てが丸く収まったような幸せな終わり方をしてくれて、本当に良かったです。
おわりに
まとまりのない文章となってしまいましたが、これにてカオスヘッドのクリア感想は終わりです。カオスヘッドのプレイ中は通りゃんせや七海の右手など、怖すぎる演出に何度もビビらされた思い出です。サスペンスらしく「これからどうなっちゃうの?」と思わされるような展開が多く、プレイしていて先がどんどん気になっていきました。
また、9章以降の拓巳のかっこよさ、魅力的なヒロイン達との個別ルートなど、「怖い」以外にも様々な感動を抱かせてくれました。
間違いなく名作と言える作品だったと思います。また時間があれば周回プレイをしたいです。
