
【サノバウィッチ】感想

Hades Gardenの振り返りと見せかけて、2015年2月27日にゆずソフト様より発売された18禁恋愛アドベンチャーゲームの感想を書いていきます。
追記よりネタバレを踏まえた感想になります。
また、スケベなゲームの感想なので18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
憧子ルート
一発目からすごいルートでした。
すごいというのは決して戸隠先輩のおっぱいの大きさに驚いているわけではありません。個別ルートなのにも関わらずシナリオが想像以上に重厚すぎました。
まず、ルートの入り方からして「主人公の能力が効かない唯一の例外」と明かされるのが読み手を引き付けてくるんですよね。
そして、煮物の味付けや夢の内容など、ひっきりなしに主人公の母親との関係性も大いに匂わせてくるという、非常にミステリアスな存在でした。
正体に関しては当初、まさか保科君のママの生まれ変わり……?なんて予想していましたが、そんなことはなかったようです。この手のエロゲでそこまで鬼畜な所業はしてきませんでした。
名前通り恋に対して強い憧れを持っていた女の子でした。下ネタを恥ずかし気もなく連発していく性格に、理由があったというのも面白かったですね。
そして正体が判明して一件落着かと思いきや、今度はヒロインの記憶が徐々になくなっていくという、泣きゲーのような展開には驚きを隠せませんでした。
日記を付けていること、思い出を話された時の歯切れの悪さなど、まさかとは思っていましたがそのまさかでした。
他の部分だと、中盤で胸中を最初に打ち明ける相手が越路さんというのも良かったですね。けじめをつけなければいけない相手でありながらも、良き相談相手でした。「あと、頑張れとは言わない」←好き
総じて、悪い意味ではなく、これが本当にキャラゲーで売ってるブランドのシナリオなのか?と思ったルートでした。上記の正体判明までの過程も記憶喪失が発覚するまでの経緯といい、伏線の回収の仕方が綺麗すぎました。
最後は深層世界の中で一対一で気持ちをぶつけることで救出するという、熱くも美しい結末でした。
「黙ってオレの傍にいろ」「とっととオレを選べ」等の強い言葉を使う保科君にはびっくりしましたね。そんなに熱い男だったのかと思いつつ。
戸隠先輩は寧々ルートでドSな彼氏に憧れているようなことを仄めかしていたので、このルートの内容もそれを反映されているのかなと思いました。
紬ルート
他のルートと比べても、主人公とヒロイン以外のキャラクターも大切にしているルートという印象でした。
主人公の父親である太一、ルート限定モブの厚真さん、ラスボス枠である子犬ちゃん。彼らの背景がみっちり語られていました。
そして何よりも、保科君と紬を繋いだ存在とも言える、ロリババアアルプのアカギ。実質的には彼女のルートとも言えるエピソードだったと思います。
着地点としては最終盤で保科君が熱弁する通り、人間とはなんぞや?というのがテーマのルートです。
保科君と紬の恋のすれ違い、そしてつんけんな態度を取りながら空回りを続けていくアカギ。
プレイヤー目線ではこういったやり切れない展開に対して見ていてやきもきする部分もありましたが、それらは大筋の一環としてあえて描かれたもの。登場人物の失敗を数多く踏まえた上で、失敗がなければ学べないのが人間である、というお話なのでした。
保科君の父親の痛ましい現状が描写されることなども、やはり主人公の選択の愚かさを強調するためのもの。これが本当にキャラゲーで売ってるブランドのシナリオなのか?と思いました。
ラストシーンも紬とアカギの二人が持っていった辺り、やはりこの二人の友情ありきの物語だったと感じました。魔女とアルプの関係性は本来打算でしかないはずが、一方は相手を友人として尊重しているが故にその関係を崩すに至り、一方は関係が崩れた後でもその友達の為に行動を決意するというのは、まさしく打算とはかけ離れた友情の形であり感動的でしたね。
見応えのあるルートでしたが、最大の矛盾点はノーブラの紬ママの胸に顔を埋めても煩悩を抱かない保科君でした。何者?
和奏ルート
共通ルート時点では、ライブシーンなのに曲名もCGも特に表示されないことに違和感を覚えていましたが、こちらでなんと専用のムービーまで用意されている徹底っぷりでした。
それにしても、生姜湯ひとつで世界線が分岐したと思うと面白いですね。流石はブレイブマン。
元々腐れ縁の関係だった二人が事故や付き合いを経てお互いを意識し合うようになっていく過程、そして和奏自身は本編が始まる前から保科君に対して好意を持っていたということなど、他のルートにはない甘酸っぱい恋愛だったと思います。
ちゅーする場面のBGMが「切なくて」なのも印象的でしたね。至るところまで至っても終始軽口を叩き合っている雰囲気もこの二人らしい。
他のルートでは「主人公の友人B」でしかない女の子と結ばれる物語というのはパラレルを感じさせられるものであり、サブヒロインのルートということで尺は短めでしたが、サブヒロインだからこその特別感があったと思います。上記の通りわざわざ専用ムービーまで用意されていたので、短いながらも優遇はされていました。
最後は相手の気持ちを五感で感じられることが最終的に幸せであると思えるという、主人公の能力の受け入れ方の終着点として、とても好きな終わり方でした。
めぐるルート
和奏ルートのような終着点が好きという話をしていたら、それに更に深く突っ込んだような物語をめぐるルートで見せられました。
めぐるが魔女やアルプとはあまり縁のない人間ということで、他ルートのような劇的なSF活劇が展開されるというよりは、とにかく主人公が後輩ちゃんとイチャラブしていくのがメインのお話でした。
山場がないかと言われるとそんなことは全くなく、めぐると結ばれた後でもなお保科君は自身の能力の在り方や、めぐるとの関わり方について深く葛藤していくことになります。とにかく各々の心理描写が全ルートの中でも最も濃く感じました。
他には二人が周囲の人間に支えられている描写が多かったのも良かったですね。
すっかりお馴染みの相談役と化した海道はもちろん、告白自体がオカ研部員達に謀られた結果成就したものであり。
最後も人生の(大)先輩である相馬さんと戸隠先輩に後押しされており、つくづく応援されているカップルであることを感じさせられました。
保科君が自身の能力についてここまで向き合っているのは本ルートだけであり、実質的にサノバウィッチ随一の保科柊史ルートとも言えるのではないでしょうか。
能力が最終的に(化学的な意味でも)昇華するという結末も含めて、保科柊史の魔法を巡った物語の最高到達点だったと思います。
そして、能力とは関係なく自分達は別の人間であり、お互いの考えを完全に理解し合うことはできない。しかし、わかり切らないということを認識しているからこそ、お互いに気持ちを伝えたく・受け止めたく思い、寄り添って生きていく。
能力のアドバンテージがあってお互いに好き合っているのにも関わらず、0か1でしかない極端な言動・行動の繰り返しによって、すれ違い続けてしまった二人が最終的に辿り着いた形として、とても美しかったと思います。
寧々ルート
共通ルートでどっぷりお近づきになった相手なだけあって、関係が進むのが早いなぁと思いつつ。実際のシナリオ容量は他ルートの倍近く感じました。
やはりメインのルートなだけあって、魔女やアルプの存在や成り立ちに大いに触れていくストーリーになるのかと思いきや、予想の斜め上をいかれました。
ED曲名の『Re:Start~君とまた出逢えて~』がそのまんまです。終わりかと思いきやタイトル画面に追加されたRESTARTを押すと、真のエンディングに到達できるという。別の時間もののノベルゲームでも見るような仕掛けでした。
とにかくこの個別ルート一本でループもの作品をやり切っている。これが本当にキャラゲーで売ってるブランドのシナリオなのか?と思いました。
タイムリープ現象には超存在である相馬さんすら置いてけぼりとなり、保科君と綾地さんのみが完全に世界から隔絶されることになります。
しかし、正確にはタイムリープしたのは綾地さんのみです。実質的な年齢だと普通に20は越えてることになりますよね。まさかの超年上ヒロインでした。
かくいう保科君も人の二倍の人生を記憶として保持している人間となったので、普通の人間ではないのですが。いわば世界から孤立してしまった二人が寄り添って生きていく、という雰囲気が良かったですね。
綾地さんは孤独な時間を生きていた時間が長く、一周目は願いを叶える為に人助けを続け、二周目は贖罪として歴史を再現しようとするように人助けを続けていました。
それらの行動の実態は、目の前の人間ではなくその向こう側を見ているという意味で、打算でしかありませんでした。
しかし、その行動原理がなんであれ、それで実際に救われて感謝している人たちは確かにいる。それは彼女の行動が自分勝手なものではなく、間違っていないということの証明でした。
こうして因果律から外れてしまっても、先のことは誰にもわからない。しかし、一度苦難を乗り越えた自分達ならばきっと幸せになることができる。そう信じさせてくれる結末でした。
てかいくらメインヒロインと言ってもHシーンが9個もある辺りエロエロでした。和奏の三倍!?
【好きなヒロイン】
寧々>めぐる>和奏>紬>憧子
【好きなルート】
憧子>めぐる>紬>寧々>和奏
順位をつけていますが、断っておきますが全ヒロイン好きだし全ルート面白かったです。
ヒロインは綾地さんが一番好きです。オナニーマスターなので。
本作はゆずソフトの中でも特に人気の高いゲームらしく、それも納得できる完成度の高さでした。
なんと言っても全てのルートにおいてシナリオがガチすぎます。本作のメインヒロインの個別ルートは、ストーリー性が強くエンタメ的な側面のある寧々ルート&憧子ルートと、テーマ性が強く心理描写に重きを置いているめぐるルート&紬ルートに二分されると思います。
厳密にはルート毎に未回収の伏線や矛盾点がないわけではないのですが、それを差し引いても双方共に方向性の違うルートでありながらも高いクオリティを誇り、どちらが好きな人にも高い満足感を与えられる構成になっているのが素晴らしかったです。
そして、それでいてイベントスチルやBGMに関しても流石は天下のゆずソフトとも言うべき注力っぷりであり、キャラゲーとしてもハイレベルなのが恐れ入りました。
BGMはやはりメインテーマの「恋せよ乙女!」がナンバーワン。そしてこれらのモチーフを使ったギターアレンジの「恋せよ乙女!(GuitarVer.)」、バトルアレンジの「使命」等が好きです。