
【ONE PIECE FILM RED】感想
8月6日に公開された映画、『ONE PIECE FILM RED』を観てきました。

自分がワンピースに触れ始めたのは約20年前からでした。
当時は家族全員がドハマりしており、家族と共にワンピースのDVDを見ながら小学生時代を過ごしました。
昔は幼いこともあって話の細かい内容までは理解できていませんでしたが、そういう経緯もあってなんだかんだで非常に思い入れのある作品だったりします。
特に思い入れが強いのはエニエスロビー編の辺りです。当時は連載を追いながら読んでいたので、これから何が起こるのか周りと予想しながら読んでいくのが楽しかったです。
今考えてもウソップやロビンとの確執の清算、一味の新能力をお披露目しながらのバチバチタイマンバトル、そしてメリー号の別れ等、漫画全体で見ても屈指の熱いエピソードだったと思います。
気付けばワンピースも25周年ということで、ワンピは紛れもなく自分の全てを築き上げた作品……かと言われれば実はそうでもありません。新世界に入ってからは全然読まなくなっていました。
一応超グラバトXという対戦ゲームをしばらくプレイしていたので、なんとなくあらすじは知っていましたが、原作やアニメにはほとんど触れなくなっていました。
映画も最後に見たのは2009年公開のストロングワールドを地上波で見たっきりです。劇場で見たのは2006年公開のカラクリ城が最後でした。
そんな自身の成長と共に離れていった漫画ではありましたが、思い出補正も相まって自分にとって大切な作品ということは変わりありません。
原作もそろそろ最終章に突入するということを聞いたので、最近無料公開に便乗して再び漫画を読み始めました。流石に連載十数年分を一週間で追うのは不可能でしたが、なんとかホールケーキアイランド編までは読むことができました。
漫画を読んだことで自分の中のワンピ熱も再燃したので、今年は久し振りに映画を観に行こうと思った次第です。
それにしても10年以上振りの映画鑑賞とは、我ながら物凄く期間が空いてしまいました。
もはや浦島太郎状態なので、ブルックなんて仲間になって間もないキャラクターなイメージすらあったのですが、もう仲間になってから14年以上経ってるんですよね。そもそも全体で見ても今では新世界編の章が四割以上を占めています。
以下はネタバレを含めた感想となります。
前述の通りホールケーキアイランド編までしか読んでない読者の目線での感想なので、間違ったことを書いていたらごめんなさい。
事前情報については「シャンクスが出てくる」「シャンクスの娘『ウタ』が出てくる」ということしか知らない状態で見に行きました。
知らなかったです。ウタがこんなに悪い子だったなんて。
てっきりいつものようにもう一人映画オリジナルキャラクターの悪者が居て、ヒロインのウタを守ってルフィ達がそいつをぶっ飛ばす話になるものかと思っていました。
実際に今までの映画のほとんどはそうだったと思います。自分が見ていない分もあるので詳しくはわかりませんが、ワンピースの映画にしてはきわめて異色の展開だったと思います。
じゃあ今回のボスは誰が務めるんだ? ……という話になりますが、それがこのウタでした。
正確には暴走したウタが召喚した魔人を倒す展開へとしゃれ込むのですが、人類の7割を眠らせるという凶悪な計画を立案したことを含めて、少なくとも諸悪の根源がウタであることは揺ぎ無かったです。
初見殺しも含んでいたとはいえ、ワノ国編突入後の時期であるルフィ達一味や、トラファルガーローやビッグマム海賊団の幹部をも篭絡したということで、『ウタウタの実』の能力は恐ろしすぎました。
従来の勧善懲悪からは離れた、そういった新しい試みのある映画でした。
ライブシーンの多さといいワンピースらしからぬ部分もあったので、これまでの映画を見ていたファンの方々からしてみれば戸惑いもありそうです。
まあ……自分はこれまでの映画をあまり見ていないという目線でしたが、そんな自分でも「めちゃくちゃ面白かった!」と手放しに褒めることはできない作品という印象を受けました。
面白かったかどうかと聞かれれば面白かったのは間違いないです。
しかし、この100分の物語は言ってしまえば、「ウタという少女が起こした壮大なマッチポンプ」だったと感じました。
『人々を夢(理想郷)の世界に閉じ込めることが幸せと考える思想』という、フィクション作品では幾度も見てきた野望です。
これはその作品によって手段や経緯が分かれているので答えがまちまちではありますが、少なくともワンピース世界の住人の反感は買ってしまいました。
これは閉塞された世界でゴードンと共に生きてきたことによって、世間知らずになってしまったことが少なからず影響していると思います。
ウタが歪んだ思想を抱いてしまった原因は、大海賊時代の闇に触れすぎてしまったからというのが最も強かったと思いますが、彼女の特殊な環境が生んでしまったというのも一端としてあると思います。
その環境を作ってしまったのは、シャンクスとゴードン。シャンクスが全て罪を被ってしまったことによってウタが捨てられたと思い込んでしまいました。
結果的にはウタは歌姫として人気を伸ばしたことで明るい性格になり、自身の手で真実を知りました。本編ではややこしかったですが、シャンクスへの憎悪は一年前には完全に解消されていたので、今回の計画にシャンクスへのネガティブな感情が関係していたことは一切なかったはずです。
それにしても、幼い少女に街の崩壊の真実を告げるのは無論過酷ではありますが、父親のせいとして収拾をつける方も過酷すぎます。もう少しやり方があったのではないかと感じずにはいられませんでした。
最後は直接的には描かれなかったものの、ウタが帰らぬ人となったのは明白だったと思います。
ワンピースの作中で主要キャラクターが命を落とすのは非常に珍しいことです。それこそルフィと関係が深いキャラクターが回想以外で亡くなったのは、エース・白ひげ以来でしょうか。
だからこそ、死を明確には描かないようにしたのかもしれませんね。その演出自体はとても好きでした。
個人的には世界中を大混乱に渦に陥れた挙句に世を去ってしまうというのもやり切れない部分があるので、改心して生き続けて欲しいとは思いました。
しかし、ワンピ界でこんな能力を持った人間が生きていたら勢力バランスが崩れるどころの騒ぎではないですから、このような決着はやむを得ないことなのかもしれません。映像越しに歌を聞かせただけで洗脳でき、大衆からの支持も厚く、影響力も強い……無敵すぎませんかね。
まあ、能力を解かない為には起き続けなければならないことを考えると、ネズキノコ前提の脅威ではあるのかもしれません。今回ルフィやローを手籠めにできたのも、「自信の人気を最大限に利用した一大イベントの中での初見殺しというワンチャンス」だったので、今回の騒動が彼女の最大値だったのかもしれませんね。
それでも能力使用中に本人が死ぬと被害者も死ぬというのがとんでもなさすぎて、ネズキノコと組み合わせた時の爆発力は兵器そのものではあると思いますが。
他の細かい部分の感想ですが、赤髪海賊団のまともな戦闘を初めて見ることができたのは良かったと思いました。
赤髪海賊団+カタクリは表側からのトットムジカの撃破を担当したということで、戦力としては麦わらの一味+αにも引けを取らず、やはり四皇の組織は伊達ではありませんでした。
あとはライブシーンは普通に好きでした。本職の歌手の方が担当しているだけあって聞きやすかったです。洗脳ソングにはゾッとする部分もありました。
本作は偏に『大海賊時代の闇が生んだ悲劇』と見ることができますが、個人的にはウタの極端な思想や周囲の不器用な行動には共感しかねる部分があり、手放しには面白いと言えなかったです。
前述の通り今回の物語は映画オリジナルキャラクターによるマッチポンプ、ひいては一人の少女が世界中の人間を巻き込んだ「お茶目」です。終盤の赤髪海賊団の戦闘は全人類平等にかっこいいと感じられる部分ではありましたが、作品自体を楽しめるかどうかのポイントは「ウタが好きになれるかどうか」に依存している部分はあると思います。
自分はこういう話もありだなーという感想はありつつも、もう少し王道オブ王道な話を見たかったという気持ちがありました。
しかし、元より「正義とは何か?」という問題提起がずっとされ続けているのが、ワンピースという漫画です。今回海賊そのものの善悪というパンドラボックスに触れてきたという事実が、作品の今後の展開に繋がっていくのかもしれません。

自分がワンピースに触れ始めたのは約20年前からでした。
当時は家族全員がドハマりしており、家族と共にワンピースのDVDを見ながら小学生時代を過ごしました。
昔は幼いこともあって話の細かい内容までは理解できていませんでしたが、そういう経緯もあってなんだかんだで非常に思い入れのある作品だったりします。
特に思い入れが強いのはエニエスロビー編の辺りです。当時は連載を追いながら読んでいたので、これから何が起こるのか周りと予想しながら読んでいくのが楽しかったです。
今考えてもウソップやロビンとの確執の清算、一味の新能力をお披露目しながらのバチバチタイマンバトル、そしてメリー号の別れ等、漫画全体で見ても屈指の熱いエピソードだったと思います。
気付けばワンピースも25周年ということで、ワンピは紛れもなく自分の全てを築き上げた作品……かと言われれば実はそうでもありません。新世界に入ってからは全然読まなくなっていました。
一応超グラバトXという対戦ゲームをしばらくプレイしていたので、なんとなくあらすじは知っていましたが、原作やアニメにはほとんど触れなくなっていました。
映画も最後に見たのは2009年公開のストロングワールドを地上波で見たっきりです。劇場で見たのは2006年公開のカラクリ城が最後でした。
そんな自身の成長と共に離れていった漫画ではありましたが、思い出補正も相まって自分にとって大切な作品ということは変わりありません。
原作もそろそろ最終章に突入するということを聞いたので、最近無料公開に便乗して再び漫画を読み始めました。流石に連載十数年分を一週間で追うのは不可能でしたが、なんとかホールケーキアイランド編までは読むことができました。
漫画を読んだことで自分の中のワンピ熱も再燃したので、今年は久し振りに映画を観に行こうと思った次第です。
それにしても10年以上振りの映画鑑賞とは、我ながら物凄く期間が空いてしまいました。
もはや浦島太郎状態なので、ブルックなんて仲間になって間もないキャラクターなイメージすらあったのですが、もう仲間になってから14年以上経ってるんですよね。そもそも全体で見ても今では新世界編の章が四割以上を占めています。
以下はネタバレを含めた感想となります。
前述の通りホールケーキアイランド編までしか読んでない読者の目線での感想なので、間違ったことを書いていたらごめんなさい。
事前情報については「シャンクスが出てくる」「シャンクスの娘『ウタ』が出てくる」ということしか知らない状態で見に行きました。
知らなかったです。ウタがこんなに悪い子だったなんて。
てっきりいつものようにもう一人映画オリジナルキャラクターの悪者が居て、ヒロインのウタを守ってルフィ達がそいつをぶっ飛ばす話になるものかと思っていました。
実際に今までの映画のほとんどはそうだったと思います。自分が見ていない分もあるので詳しくはわかりませんが、ワンピースの映画にしてはきわめて異色の展開だったと思います。
じゃあ今回のボスは誰が務めるんだ? ……という話になりますが、それがこのウタでした。
正確には暴走したウタが召喚した魔人を倒す展開へとしゃれ込むのですが、人類の7割を眠らせるという凶悪な計画を立案したことを含めて、少なくとも諸悪の根源がウタであることは揺ぎ無かったです。
初見殺しも含んでいたとはいえ、ワノ国編突入後の時期であるルフィ達一味や、トラファルガーローやビッグマム海賊団の幹部をも篭絡したということで、『ウタウタの実』の能力は恐ろしすぎました。
従来の勧善懲悪からは離れた、そういった新しい試みのある映画でした。
ライブシーンの多さといいワンピースらしからぬ部分もあったので、これまでの映画を見ていたファンの方々からしてみれば戸惑いもありそうです。
まあ……自分はこれまでの映画をあまり見ていないという目線でしたが、そんな自分でも「めちゃくちゃ面白かった!」と手放しに褒めることはできない作品という印象を受けました。
面白かったかどうかと聞かれれば面白かったのは間違いないです。
しかし、この100分の物語は言ってしまえば、「ウタという少女が起こした壮大なマッチポンプ」だったと感じました。
『人々を夢(理想郷)の世界に閉じ込めることが幸せと考える思想』という、フィクション作品では幾度も見てきた野望です。
これはその作品によって手段や経緯が分かれているので答えがまちまちではありますが、少なくともワンピース世界の住人の反感は買ってしまいました。
これは閉塞された世界でゴードンと共に生きてきたことによって、世間知らずになってしまったことが少なからず影響していると思います。
ウタが歪んだ思想を抱いてしまった原因は、大海賊時代の闇に触れすぎてしまったからというのが最も強かったと思いますが、彼女の特殊な環境が生んでしまったというのも一端としてあると思います。
その環境を作ってしまったのは、シャンクスとゴードン。シャンクスが全て罪を被ってしまったことによってウタが捨てられたと思い込んでしまいました。
結果的にはウタは歌姫として人気を伸ばしたことで明るい性格になり、自身の手で真実を知りました。本編ではややこしかったですが、シャンクスへの憎悪は一年前には完全に解消されていたので、今回の計画にシャンクスへのネガティブな感情が関係していたことは一切なかったはずです。
それにしても、幼い少女に街の崩壊の真実を告げるのは無論過酷ではありますが、父親のせいとして収拾をつける方も過酷すぎます。もう少しやり方があったのではないかと感じずにはいられませんでした。
最後は直接的には描かれなかったものの、ウタが帰らぬ人となったのは明白だったと思います。
ワンピースの作中で主要キャラクターが命を落とすのは非常に珍しいことです。それこそルフィと関係が深いキャラクターが回想以外で亡くなったのは、エース・白ひげ以来でしょうか。
だからこそ、死を明確には描かないようにしたのかもしれませんね。その演出自体はとても好きでした。
個人的には世界中を大混乱に渦に陥れた挙句に世を去ってしまうというのもやり切れない部分があるので、改心して生き続けて欲しいとは思いました。
しかし、ワンピ界でこんな能力を持った人間が生きていたら勢力バランスが崩れるどころの騒ぎではないですから、このような決着はやむを得ないことなのかもしれません。映像越しに歌を聞かせただけで洗脳でき、大衆からの支持も厚く、影響力も強い……無敵すぎませんかね。
まあ、能力を解かない為には起き続けなければならないことを考えると、ネズキノコ前提の脅威ではあるのかもしれません。今回ルフィやローを手籠めにできたのも、「自信の人気を最大限に利用した一大イベントの中での初見殺しというワンチャンス」だったので、今回の騒動が彼女の最大値だったのかもしれませんね。
それでも能力使用中に本人が死ぬと被害者も死ぬというのがとんでもなさすぎて、ネズキノコと組み合わせた時の爆発力は兵器そのものではあると思いますが。
他の細かい部分の感想ですが、赤髪海賊団のまともな戦闘を初めて見ることができたのは良かったと思いました。
赤髪海賊団+カタクリは表側からのトットムジカの撃破を担当したということで、戦力としては麦わらの一味+αにも引けを取らず、やはり四皇の組織は伊達ではありませんでした。
あとはライブシーンは普通に好きでした。本職の歌手の方が担当しているだけあって聞きやすかったです。洗脳ソングにはゾッとする部分もありました。
本作は偏に『大海賊時代の闇が生んだ悲劇』と見ることができますが、個人的にはウタの極端な思想や周囲の不器用な行動には共感しかねる部分があり、手放しには面白いと言えなかったです。
前述の通り今回の物語は映画オリジナルキャラクターによるマッチポンプ、ひいては一人の少女が世界中の人間を巻き込んだ「お茶目」です。終盤の赤髪海賊団の戦闘は全人類平等にかっこいいと感じられる部分ではありましたが、作品自体を楽しめるかどうかのポイントは「ウタが好きになれるかどうか」に依存している部分はあると思います。
自分はこういう話もありだなーという感想はありつつも、もう少し王道オブ王道な話を見たかったという気持ちがありました。
しかし、元より「正義とは何か?」という問題提起がずっとされ続けているのが、ワンピースという漫画です。今回海賊そのものの善悪というパンドラボックスに触れてきたという事実が、作品の今後の展開に繋がっていくのかもしれません。